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観覧車
「……ここ…って…」
「今からこれ乗りましょう」
チラッとスマホで時間を確認した猛が連れてきてくれたのは遊園地の端っこにある大きな観覧車だった
夜になってライトアップされてキラキラしている
きれいだな…
でも……パレードの方がもっとキラキラだもん…
相変わらずむすっとした表情のまま猛についていく
「はい、二名様ですね~」
「よろしくお願いします…」
猛はおれの手を引きながらたんたんと係りの人と話していた
おれらの番が来て観覧車のゴンドラの中に案内される
猛がおれの方を向いて手を引いた
「ほら、先輩乗りますよ?足元気を付けてくださいね」
「………」
なんか…子ども扱いされてる気がする…
猛は悪くないのにむっとしてぷいっと顔を背ける
「先輩、ちゃんと前見て乗ってください、躓きますよ」
別に…平気だもん…
むくれて猛の忠告を無視してそっぽを向いたまま乗り込もうとした
そしたら…
「うわっ!!」
「っわ!!」
猛が言ってたみたいに足が引っ掛かって躓いた…
慌てて猛がつんのめったおれを支えてくれる
「……先輩…」
「………」
「良いですね、ちゃんと前見て乗ってくださいよ」
「………」
少し呆れた声の猛にしたがって今度はちゃんと注意してのりこんだ
……たまたまだもん…
「…………」
「…………」
その後ゴンドラの中でもオレは一言も発さずじーっとうつむいていた
パレードの事は猛にはどうしようもないことなのにむすくれた
猛もなにも喋らない…
やっぱり冷たくし過ぎたかな…猛悪くないのに…
それでも今頃やめることができるわけでもなく今も拗ねたむすっとした顔のままだった
「………」
「………」
静かなままゆっくりとゴンドラは上がって行く
学なら高いとこも少し苦手だから銀にきゅってやるのかも…おれもほんとは猛に甘えてそうしたい…けど…
なんてそんな事を思ってた時…
「あ、先輩、見てください」
「………」
猛が突然パッと顔を上げて声を出した
窓の外を指差している
…………
引っ込みがつかないままぷいっと余計顔を背けてみる
子ども扱いしてほしくないといつも思うのにやってることが子供っぽくて自分で自分にムッとした
「………先輩、こっちです…」
「ッ…!!………!!」
でも猛はそんなのはお構いなしでいつもの優しい口調のままおれの頬を撫でておれの顔が外へ向くようにした
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