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キス未遂
「……先輩…」
「…!!」
先輩の顔に顔を寄せる
観覧車で夜景見て…とかベタすぎるしクサいしで頬付先輩なんかにばれたらしばらくはバカにされて大爆笑されそうだけど…
そう思いながらもオレが顔を寄せるときゅっと目を閉じて唇を少し突きだす先輩を見るとそんな事全部吹っ飛びそうだった
頬付先輩と学さんのとこみたいに半独り暮らしみたいな状態ではないからなかなかこういうこともできないし…その…欲求不満って言うか……
自分でそんなこと思ったことが恥ずかしかったけど本当なんだからしょうがない…
「………」
「………」
ゆっくりと先輩の顔に自分の顔を近づける
ガラにもなく心臓がドクドク言っていた
何度やってもこういうのは緊張するし慣れない…
そしてもうあと唇が重なるまで1cmという時…
ガチャっと音が鳴ってしーんっと静かだった空間に急にざわざわとうるさい音が流れ込んできた
「…!?」
「!!」
「一周お疲れ様でしたー!!足元に注意してゴンドラから降り…て…………ッ!!」
「!!」
「!!」
先輩の頬に手を添えもう片方の手で先輩の肩を掴んだ格好で、キスする寸前の距離のまま大きく開け放たれたドアの方に顔を向けた
先輩も大きな目をさらに大きく見開いてそちらを向いている
「…あ……え…と…」
「………」
「………」
そこにはオレ達が観覧車に乗り込むときに誘導してくれたスタッフの女の人が引きつった笑顔のまま固まっていた
その向こうにはパレードが終わって最後に観覧車に乗ってから帰ろうと並んでいる客もいる
客の方でも何人かはこちらの様子に気づいているらしく顔を赤くしたり、さわいだり、隣にいるやつに教えたりしていた
………やば…
先輩は相変わらず驚いたものの回復が早いらしくオレとスタッフの子の顔を交互に見くらべていた
「………」
「………」
「………」
「……す、すみません…降ります…」
「え、あ…はい…」
どう対応したらいいか戸惑うスタッフの子に謝ってできるだけ顔を隠すようにしながら先輩の手を引いてそそくさとその場を後にしようとした
出口から出る時に何人かの客に笑われたり、ヒューっとからかわれたりする
足早にその場を立ち去った
「………」
「………」
早足でしばらく歩いてからチラッと先輩の顔を確認してみた
先輩と目が合う
「……っふふ…」
「…へへっ…あはは!!」
ぷっ!!っとどちらからともなく吹き出してその場で笑った
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