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お薬

「ん、じゃあまなお薬飲もな?」 そう言った瞬間さっきまでお腹がいっぱいになって満面の笑みを浮かべていたまなの顔がさっと曇った 顔がこの世の終わりみたいに真っ青になっとる… 何となく想像できたけどダメでもともとで薬を手に取ってみる… 「まなほらお薬…」 「いやっ!!」 「ま…」 「いーやぁー!!」 まなはオレが薬を手に取っただけでぶんぶんと首を振ってぐいっとオレを押しのけた 何度やっても薬を持ってる方の手からできるだけ体を離そうとする やっぱりまなは薬を飲みたくないらしい 「っや、っやぁ!!」 「でもまな薬飲まんと良くならんで?」 「……うぅー……やぁ…」 まなは直したいって気持ちもあるらしく少しだけ悩んでから涙目でオレを見上げ困ったような表情でゆるゆると首を振った とりあえず一回薬と水の入ったコップを机の上に戻してまなの隣に座る するとまなはすぐ薬を飲まされることはないと理解したのか寄ってきてオレの膝の間におさまるとオレの胸に頬をすり寄せてきた 熱下がっとるんやったらまだええけど…あついんよなぁ~… まなは『やぁ…』って懇願するような視線をオレに向けてくる その顔は熱に浮かされて真っ赤やった 「でもなぁ…まな辛いまんまなの嫌やろ?」 「……うぅー……」 「お薬飲んだら楽になると思うんやけどなぁ~…」 「………」 幼い子供に話しかけるようにまなの頭を撫でながら声をかける ていうか今のまなは幼い子供そのものや… 本当なら子供なんかの面倒絶対見たくないけど、まなやもんなぁ~… かわいくないわけがない… するとまなはまだゆるゆると首を振った 「じゃあまなどうしたら飲んでくれる?甘いジュース買ってきたろか?アイスと一緒に食べるとか…」 「………うー、やぁ…」 「んー、いやかぁ…」 まなはひしとオレの服を掴んで離そうとしない これ美登里さん小さい時のまなにどうやって薬飲ませてたんやろ…? でもそんな事いま考えても分からない ぐずるまなの背中をぽんぽん叩いてやりながらどうしたらまなが薬を飲んでくれるか考えた そして良いことを思いついた 「……なぁまな?オレがお薬のませたろうか?」 「………?」 「まなはくちあーんってして目つむって待っとるだけでええから、その間にオレが飲ませたるわ、まながわかんないようにそーっとな?」 「……でも…」 「やってみないとわからんやろ?まなまだ体熱いし…ちょっと頑張ってみーひん?」 「………」 まなの頭を撫でてやりながらそう言うとまなは少しだけ瞳を揺らして考えた まなも飲めるなら頑張って飲みたいと思っとるらしい そしてまなは悩みに悩んで悩みぬいた結果小さな声で『いーよ…』といってこくんと頷いた

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