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進路
「……ッ!!」
もういつの間にかコートがないと寒い季節になっていた
ぶるっと身震いする
「あー…さむさむ…」
「……じゃあマフラー巻けよ…」
「えー…まなと長いの半分こしたいわぁ…」
「………しない…」
銀もさまになる冬服姿で歩いている
さむそうに手を擦っていた
「急に寒くなるんやもんまだコートやマフラー準備してなかってん」
「自業自得だ…」
そんな事を話しながら学校へと続く坂道を歩く
皆楽しそうに話したりじゃれたりしてたけど最近は手に参考書や単語帳なんかを持って歩く人も増えた
もうすぐ受験だ…
「………」
「………」
ぶるっと背筋が震えて首をすくめる
俺達高3はあと二か月もしたら大学受験がある
俺も、健斗ももちろん銀だってそうだ…
………まぁ銀は夏ごろに推薦の話とかもあったらしいけど…
「………」
「………」
ちらっと横目で銀を見る
何でもこいつはその推薦の話を断ったらしい
そりゃとびきり行きたいところがあるとかしたいことがあるって言うんだったらわかる
でも銀はそんな感じでもないしどこでもええわぁなんて言ってた事もあった気がする
ちなみに俺は家から通える近所の大学を受けるつもりだ
一応国立だけどこの間の模試の感じだったらこのまま勉強していれば受かれそうだった
特別したいことがあるわけではないから広くカバーできる学部に行って勉強しながらその後の事を決めようと思ってる
………
再度銀を横目で見る
………銀は…どこに行くのかな…
少し前までは銀は俺と同じところに来ると思っていた
学部は違えど近いしなんとなく大学でだって銀と一緒だって勝手に思ってた
でもそんなのは俺が思ってるだけの事だ
ふっとそのことに気付いて銀に進路について聞いてみたことがあった
「ねえ…銀はどこの大学受けるの?」
「…ん?せやなぁ…」
再度気になってその質問を口に出してみる
以前とは違った答えが帰って来ることを期待したけれど大して変わらない答えが返ってきた
「どこでもええなぁ…」
「どこでも…って…」
「まぁ…適当に受けて適当にきめるわぁ…」
「………」
銀は自分の進路の話になるとすぐこうやっていい加減な事をいってはぐらかす
今までもいろんな人が何度か聞いたけど俺にすらはっきりとは教えてくれない
銀の横顔を眺めてみるけどなにを考えてるかなんてさっぱりわからない
……なんだか少し不安だった…
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