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『一緒』の幸せ
「………」
「………」
いつも通り銀の部屋で何をするでもなく過ごした
でも俺としてはいつもとは違う心持でいつ銀に進路の事について聞こうかタイミングを見計らってた
……今日こそちゃんと聞くんだ…絶対…
グッと拳を握って覚悟を決める
「あっ、あのっ…!!」
「あのな?まな、大事な話があるんやけど…」
「へっ…!?は、話!?」
「せや、大事な事やねん…」
「え、っと…」
決心して声をかけたら銀に遮られてしまった…
ツイてない…
すこしへこむも銀が珍しく真剣な顔をしてるのを見て思わず居住まいを正した
ていうか…大事な話…?
そんな大事な話なら別に俺の話は後でもいいから良いんだけど…
「………話してもええ?」
「な、なに?」
真剣な表情に真剣な声の銀に気圧されてごくっと喉を鳴らしながら先を促す
何の話をされるのか見当もつかなかった
「……あんな…まな、最近オレの進路の事…気にしとったやん…?」
「え…あ、あぁ…うん…」
ばれてたんだ…さりげなく聞いてたつもりだったんだけど…
今は関係ないけどそんな事を不服に思いながらとりあえず頷く
「でな…?その進路の話なんやけど…」
「へ、進路?」
「…?せやで?」
自分が聞きたかった話を銀から切り出してくれたことに驚く
不自然な返事をしてくれたことに気付いて銀に先を促した
「あ、ごめん…続き、話していいよ…」
「………そんでな…その進路なんやけど……オレな…T大に行こうと思うねん」
「……え…T大…?」
「……うん」
ビックリしてうまく返事ができなかった
T大って言ったらめちゃめちゃ有名な国立大学だ…
テレビにもよく出てるオシャレで頭のいい人たちが集まる大学で総理大臣とか官僚とかにもT大卒の人が大勢いたように思う…
あまり詳しく話聞いたことないからわからないけど確か金さんもそこだったって言ってなかったっけ…中退らしいけど…
とにかくしらない人はいないぐらい有名な大学でそして遠くにある大学だった…
飛行機か…新幹線を乗り継がないといけない距離だ…それも日帰りでどうこうって距離でもない…
頭が真っ白だった
それって…それって銀が遠くに行くってこと…?
とっさに志波がイギリスに行ってしまった日の泣きじゃくる若葉ちゃんの姿が目に浮かんだ
こうやって銀と当たり前みたいに一緒にいたり、遊んだり、お昼ご飯食べたりできなくなるってこと…?
イマイチ実感がわかなくてしばらく何も言えなかった
「………」
「……ごめん…はよ言わな思ったんやけどギリギリまで悩んでてん…」
「………」
銀が申し訳なさそうにそう言った
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