885 / 1015

秘密の秘密

みんなそれぞれが悩みを抱えていたころ… 所変わって運動部の部室棟にも悩める男子がいた… 「………はぁ…」 俺の名前は藻府寛太(もふかんた)、バレー部の3年だ バレー部は結構ギリギリまで大会があるから今日も部室に来ていた 今年は高校最後の年だってこともあって高1の時からあこがれてきて、今年やっと同じクラスになれた久遠夏輝(くどうなつき)さんとクラス全員で行った夏祭りで二人で回ることができた 一緒にお祭り回ってキャッキャウフフな感じで手とかぐらい繋いじゃったりしちゃったりしてあわよくば付き合う…とか… なんて思ってたのにその夏祭りで俺は面倒事に巻き込まれてしまった… 何でも久遠さんと仲のいいおとなしめな感じの女の子の桜井さん?がこれまたおとなしめ…って言うか特にパッとしないタイプの男子の杉田って奴の事が好きみたいで、くじ引きでたまたま二人で回ることになってしまった杉田と桜井さんが心配な久遠さんはその恋路を応援すべくちょこちょこお祭りの途中に桜井さんにフォローを入れていた ちょこちょこ…っていうかもうどっちかって言うとお祭りそっちのけでそっちの心配をしてた… だから俺はそんな久遠さんに付き合って良く知りもしない二人の恋のキューピットとして奔走することになった… これで二人が上手く言ってくれれば久遠さんの中での俺の株もあげられるかもと思ったし、二人が上手くいかなくても共通の秘密とかができてそこから仲が発展したりするかもなんて軽い気持ちだった… なのに俺はこれが原因でとんでもない『共通の秘密』を得てしまう… 杉田の事は知ってはいた 同じクラスの男子で話しかければそつなく返して来るけどそれ以上では無い感じって印象だった ノリが悪いわけでも暗いわけでもないけどずば抜けて面白いやつでも明るいやつでもなかった 不特定多数の一人って感じ? でも彼女がいるって噂があってそれで俺も何度か杉田を茶化したことはあった そんなやつのその『噂の彼女』がまさか…あの頬付だなんて… 「………はぁ…」 また大きなため息が漏れた もう何か月もそのことで悶々としている… 今も忘れられない… 緊張しつつも告白した桜井さんに杉田が自分には付き合ってる相手がいると打ち明けその瞬間自分のすぐ隣でその様子を見守ってた頬付が草むらから出て行き杉田にキスした… 全く意味が分からず固まってた… 後日改めてあの二人はそう言う関係の二人なんだと認識して気恥ずかしくなった とんでもない秘密を知ってしまった罪悪感と優越感と同時に誰かに言ってしまいたい衝動に駆られた でも久遠さんに『二人、隠してるみたいだし、それをわざわざ言いふらすなんてするべきじゃない』って言われたし、実は頬付にまで頭を下げられた… あんなにモテまくって、女とっかえひっかえしてるなんて噂もあって、本人もいつもまんざらでもないような顔をしている頬付が真剣な顔をして俺に頭を下げに来た だから俺もこれは内緒にすべきことなんだってずっと黙って来た 現に誰にもこのことは言ってない… でもその事実を知ってしまってからどうしてもそう言う目で頬付と杉田を見てしまう… 他の奴らは知らないから何とも思わないような事でも俺には全部そういうことのように見えてしまって勝手に気疲れしたりむずがゆい気持ちになる生活が続いていた もう誰かに言ってしまってすっきりしてしまいたい… 久遠さんとの共通の秘密からも、軽そうな頬付に真剣に頭を下げられたことからも時間が経ち、遠ざかってしまったこの頃はもうそう思ってしまっていた… ナイショにこっそり誰かに言ってしまいたいって… 「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」 がしがしと頭を掻きむしる もう俺ストレスで禿げそう!! そんな時部室の扉があいてガヤガヤと同じ部活の3年が入ってきた 入ってきた瞬間目に入った頭をがしがしする俺を面白そうな目で見ている 「寛太はやいじゃん?何やってんの?」 「悩み事かー?頭良くないんだから悩んだって禿げるだけだぞー」 「………」 ぐぅっと黙り込む 言いたい…言っちゃいけないことだってわかってるけど…言いたい… すると何も言い返さない俺を怪訝に思ったのかそいつらのうちの一人が少し真剣そうな声になって聞いてきた 「なんだよ、ほんとに悩んでんの?」 「なになに?どうしたんだよ?」 「………」 皆心配そうに俺の周りに集まってくる ……皆3年間一緒に部活をやってきた仲間だ……信頼もしてるし絆だってある………………………こいつらなら…… 「………あのさ…………絶対言うんじゃねえぞ…」 この時どんなに信頼してても仲が良くてもこんなこと言うべきじゃなかったんだ…絶対…

ともだちにシェアしよう!