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当事者
目の前に立つ女子が腕を組んでこっちを睨み付けてくる
周りの奴らも少し遠巻きながらも興味津々って感じでこっちを見ていた
背中を冷たい汗が伝った
口の中が乾いて喉がくっつくような感覚になる
「……え、っと…」
「だから、頬付銀と恋愛感情で付き合ってるのかって聞いてるの」
「………」
上手く言葉が出てこなかった
なんで知って…
教室がシーンと静まり返った
皆俺の方を見つめて俺が何か言うのを待っている
体がすーっと冷えて行くのを感じた
「なんかいいなよ」
「…あ……」
いらだった声で女子に急かされて口を開こうとする
するとその時ガラッとドアの開く音がしてみんなの視線が俺から離れた
「…?…あれ?なにこれ?」
「………」
入って来たのは銀だった
不思議そうな顔で異様な雰囲気のクラスを見回して、俺の事もちらっと一瞥し再度首をかしげた
「なしたん?」
「…銀くん!!」
銀がそう言うとハッとしたように今まで俺に問い詰めていた女子とその取り巻きがぞろぞろと銀の方に移動して行った
俺に聞くよりも銀に聞いたほうが早いと思ったのかもしれない
中にはチッと俺に舌打ちしていく子までいた
とりあえず俺からみんなの視線が反れてくれてホッとする
でも根本的には何も解決されてなかった
「ねえ銀くん、杉田と付き合ってるって本当なの?」
「え?」
「そう言う噂があるのよ、杉田学と銀くんが付き合ってるんじゃないかって…ねぇ、嘘よね?私心配なの…」
この角度から女子の顔は見えないけれどきっと上目使いで銀を見上げ瞳をうるうるさせながら話しているんだろう
俺相手の時とは相当な違いだ…
でも…もしここで銀がそんなことあるわけないって否定してくれればもしかしたらうまく切り抜けれるかもしれない…
銀は少し考えてから再度ゆっくり辺りを見回した
銀とバチッと目が合う
昨日の事もあって少しドキッとしたけど上手く切り抜けられることを願って祈るような気持ちで銀を見つめ返した
そして銀はゆっくりを口を開いた
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