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現状
昼休みに猛と健斗とご飯を食べれたおかげで少し元気になった
二人とも優しかったな…
健斗は俺に大丈夫?って聞いてずっと心配してくれたし、猛は真面目に相談に乗ってくれた
猛に言われたことを思い出す
『きっと…今はみんな物珍しがってるだけですよ…オレと紺庄先輩もいろいろ言われましたけど…時間がたてば何も言われなくなりますし………まぁ…相手が頬付先輩だからオレと紺庄先輩みたいにとはいかないかもしれませんが…』
『………』
きっとそうなんだと思う…
今日の時点でだって俺に気持ち悪いとか嫌だとかマイナスの感情を感じているのは多分全体の2割ぐらいだと思う、残りのほとんどは好奇心でごくごく少数俺に同情してくれる優しい人がいるぐらいだろう
だからその好奇心と同情の7割が飽きてしまえば噂やなんかは収まっていくと思う…
「……見て…ほら、杉田くん…」
「あー…あの頬付くんの…?」
「本当なのかな…?」
「さぁ…?でもマジっぽかったって杉田くんたちと同じクラスの子が言ってた…」
「男同士ってことだよ…ね…?」
「……なんかね…?」
…さすがに2日3日じゃ無理だろうけど…
オレが通るだけでどこからでもこんなうわさが聞こえてきた
ふうっと溜息が漏れる
そんな心無い会話を聞くとズキンと胸が痛んでかなしくなった
こうしてできるだけ早足で教室まで戻ってくるとなぜか皆ガヤガヤと移動し始ていた
なにやらこっそり聞き耳を立ててみると急に今朝授業が変更になったらしい…
俺…教室から出て行ってたから聞いてないんだ…だれかに聞かないと…
慌てて健斗を探すけど健斗は見当たらなかった
もう移動してしまってるのかもしれない…
教室にはもう人がほとんど残ってなかった
こっそり誰かについていくって手段もあるけど…それはなんだか不審者っぽい…
それにもしかしたら声をかけて誰かと話すことができれば一人ぐらい銀とのことを理解してくれるかも……
ごくんっと口の中の唾を飲み込み勇気を出して近くにいた男子三人組に声を開掛けた
「あの…さ……」
「え?あ……」
「そ…の…次…移動……なの?」
「あ…あぁ…さ、三階で…ビデオみる…って、さ…」
「そ、そっか…」
「………」
「………」
広がらない会話にすこし顔を曇らせる
でも少しでもはなせた
この調子で……
「……おい…行こうぜ…」
「…お、おー…」
「…あ…」
でも結局俺がそう意気込んだところでそいつらはお互いの顔を見合わせて気まずそうな顔をしてそそくさと移動していってしまった
「………」
昨日までは普通に話していたクラスメイトだったのに…
そのことが余計に俺に現実を叩きつけるようで辛かった…
そしてこの次の日…俺はさらに現実の厳しさを目の当たりにすることになる…
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