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待ちわびた…

俺への嫌がらせはどんどんエスカレートして行った 物が無くなったり机への落書きは日常茶飯事 最近は堂々と悪口を言われたり足を引っ掛けられたりもした 嫌がらせが続いて俺はどんどん疲弊していった そんな時銀がやっと学校にきた 俺がもうほぼ日課となりつつある机の落書き掃除をしていたら教室がざわめいてそちらを見るとクラス中の視線を集めた銀がいた ……銀… 久々に銀を見てふっと体から力が抜けた ぼんやりと銀を眺めたままで動きが止ってしまう 「………」 銀は何も言わずに教室に入ってくるとぐるっと教室を見回すと俺を見て少し顔をかしげてから俺の手元を見て今度は嫌悪感をあらわにした ぼんやりしたまま自分の手元に視線を持ってく 毎日何度も冷たい水に触ったせいであかぎれてカサカサになった手と大量の悪口が書かれた机が見えた 机に書かれている単語は口に出すのもはばかられるような事ばかりだった 銀に見られた… 良い気持ちはしなかったけれどいずれ銀だって知ることだし取り立てて隠そうとは思わなかった もう俺の感覚はマヒしていたのかもしれない そう思って再度雑巾を握りなおして机の掃除を再開しようとした俺の手を大きな手が握った 誰かに触れられたのが久しぶりで暖かかった 顔を上げると苦々しい顔をした銀がいた 「………ちょっと来て…」 「………」 銀はそれだけ言うと俺の返事を聞かずに手を引いて歩き出した 早足でぐんぐん進むからついていくのがやっとだ 俺らの噂はすでに学校中に広まっていたからどこに行っても好奇の目に晒された 銀は俺を階段裏まで連れて行ってやっと手を離してくれた すこしだけ手のあかぎれが痛んだ こっちを振り返った銀がゆっくりと口を開いた 「まな…あれ…なんなん…」 「………」 あれ…? あれって言うのは多分机の事だ なんなんって言われても…見たまんまだよとしか言えない だから素直に俺はそう言った 「……いつから…」 「…………銀が学校来なくなった日の次の日から…」 「結構前やん…」 銀はふーっと息を吐いて置いてあったマットの上に座った チラッと俺の手を見てから俺の顔を見た 俺は立ったままだった 「……なんで言うてくれなかったん…」 「銀を待とうと思った…」 「待とうと…って…」 素直にその時思ってた事を言った 結局銀が戻って来るまでに認めてもらうことは無理だったけれど… でも銀はその回答が気にそぐわなかったのか少し機嫌を悪くした

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