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大切でくだらない
「……なぁ…なんでまな抵抗しなかったん…」
「………」
銀が俺を見上げる体勢でそう質問する
抵抗…なんでしなかったんだろう…?
すこし考えてみたけど答えは比較的単純だった
抵抗したら銀とのことを否定するような気がした…
銀とのことを認めてもらえないような気がしたんだ…
だから耐えようと思った
心のどこかで銀の恋人ならあんな風に嫌がらせされても当たり前って思ってたのかもしれない…
でもそれをなかなか口に出せずにいると銀が再度口を開いた
「いくらでも抵抗なんてできたはずやろ?怒るとか、怒鳴るとか…」
「………」
「なんであんな風にじーっと黙っとるん?あんなくだらんこと…ちゃんと抵抗せんかったらすぐ止るもんも止らんくなるんやで?」
銀は小さい子を諭すような言い方でそう言った
くだらないこと…
銀のそのセリフがグサッと胸に刺さった
くだらないって…?
俺は銀のためを思って我慢してたのに……皆に銀とのこと認めてもらおうと思って、怖くて辛いのも我慢してたのに……くだらない…なんて…
銀の顔を見ると銀は俺の顔を見て驚いた表情を浮かべていた
「…って…」
「…?」
「くだらない、こと…って……」
「………」
「俺だって…俺だってあんなことされたくてしてるわけじゃない!!」
「!!」
銀の顔がさらに驚いたものになった
驚いた顔のまま口を開く
「じゃあなんで…」
「なんで!?銀のためじゃん!!銀のためにみんなに認めてもらおうって思って………銀がずっとみんなに言いたいって…認めてもらいたいって言ってたから、俺は…」
「………」
そこまで言うとじわっと涙が滲んだ
銀にあんなくだらないことなんて言われたら今までの俺の我慢は……頑張りは…
そう思うと惨めでしょうがなくて涙が出てきた
俺の…努力は…
恩着せがましいってわかっていた
別に銀はそんな事頼んだわけじゃない…
もしかしたらみんなの前でオレと付き合ってるって言ったのも冗談だったのかもしれない…
でも…銀がもしそうしたいと思ってるならそれでもいいなって……
俺もちょっとだけ…健斗と猛みたいにみんなに銀とのこと認めてもらえたらいいなって…
そう思うと涙が止まらくなった
銀は黙ったままオレを見ていた
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