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譲れない
「うっ…うう…」
「………」
まなが目の前でぽろぽろ泣いとる
オレが泣かせてしまった…
まなは制服の袖で涙を拭きながら唇を噛んで必死に涙を止めようとしとった
まなはオレが認めてもらいたいって言うたから認めてもらえるようにと嫌がらせを我慢していたらしい
嫌がらせに抵抗したらオレとのことを否定しとるように思ったらしい
きっと我慢してたいろいろなもんがあふれ出して止まらんのやろう
まなはずっと泣いとった
でも…それでも…
「まな…」
「………」
自分でもびっくりするほど冷ややかな声が出た
腹の奥底に抑え込んだ怒りが再燃したように体の内が熱かった
オレは…怒ってたんやと思う…
まなが涙にぬれた顔を少し上げた
「オレがそれを望んどったと思うとるん?」
「……だってっ、みんなに付き合ってること言いたいって…」
「そのことやない…まながあんな風に嫌がらせされることや」
強い口調でそう言うとまなはハッとしてから唇を引き結びうつむいた
「………でも…そうするしか…」
「………」
そう言うとゆっくりと顔を上げた、まなも負けじとオレを見つめ返して来る
「………」
「………」
しーんっと痛いぐらいの沈黙が続いた
ずっとまなと見つめ合っていたけどまなは目を逸らそうとしなかった
涙が滲んだ目でこっちをじーっと見ていた
『皆に認めてもらうこと』と『まなが嫌がらせを受けること』を天秤に掛けたと一瞬でも思われたことに腹が立った
でもまなもまなで譲れないと見つめ返してくる
自分のしたことが無駄やったと認めたくない…認められないんやと思う…
まなの目には迷いの色が見えた
でもその時のオレはそれに気づくことができなかった
「……………もう知らん…」
「………」
わかってくれないまなにイラついてそう言ってしまう
まなはそれを聞いて悲しそうな顔をしたけれどオレが教室へ戻って行くのを止めはしなかった
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