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隠しきれない悲しみ

「あっ♥銀くん♥」 「銀くんおはよぉ~」 「………」 銀が学校に来るようになってしばらくたった 女子は俺に見せつけるように毎日銀にすり寄っていく 銀はそれを止めなかったし俺も何も言わなかった 「………」 まためちゃめちゃに落書きされた自分の机を見下ろす 実は銀が来ても嫌がらせは続いていた しばらくの間は俺と銀の様子を窺うようにいやがらせもなりを潜めていて至って平和な日々を過ごせていたけれど、俺と銀が不仲になっていると気づいてからは銀にアピールするように嫌がらせはさらにエスカレートしていっていた… 机、体操服、ロッカー、靴箱…… どんどん俺の居場所がなくなって行ってる気がした 「………」 仕方なくごしごしと机を雑巾で擦り始める 銀にああ言われて、もう我慢する理由はなくなったけれどやっぱり抵抗すると皆に銀との関係を否定することになる気がして…そして否定しちゃったら銀との希薄になってしまった繋がりが切れてしまうような気がして言い出せなかった もういいや…って思ってた部分もあるのかもしれない… 「………」 机を拭くのが上手くなって綺麗になるのが早くなってきた… 悲しいことだと思う… 「ぎんくぅ~ん!!」 「ッ…!!」 机を拭く俺にドンッと女子がぶつかって行った わざとな事はわかってた だからこっちを見て笑われようが、陰口をたたかれようが…良いんだ…別に…どうでも… そんな事を考えてたら急にじわっと目が熱くなってきて何かがこぼれ出てきそうになった だ、大丈夫…大丈夫… 辛くない…から………もっとつらいことだって今までいっぱいあったから… そう自分を慰め慌ててこらえようとしたけどそれは止ってくれずぽたっと机にそれが一滴垂れた 「クスクス…」 「泣いてなーい?だっさ…」 「ッ…」 震える足を急いで動かして教室から出た 廊下に出てもそれは止らなかった 「…ッズ…ぐず…」 すれ違う人が皆、俺の事をくすくすと笑っているような気がする… おかしい…おかしいな… そんな悲しくないんだけど… これは本心だった どこか麻痺していたのかもしれないけれど特別悲しさや辛さを感じたわけではなかったはずだった なのにあふれ出したそれは止らなかった… 誰もいない階段裏まで歩いていってそのままたまらずそこの隅にしゃがみこむ 誰にも見られていないっていう安心感からか体から力が抜けてしまった しゃがんだまま立つことができず腕に顔を押し付け泣く 「ッう…うぅ…」 涙はよりぽろぽろ出てきて止まらなかった どうしよう…ははっ…止まらない… 溢れた涙は顔を伝い拭いきれなかったものがゆかにぽたぽたと落ちて行く 「……つ、うぅ…うぁ…」 「………」 誰にも見られていないと思ってそれを良いことにボロボロ泣く 独りになった途端さっきまではそんなに感じてないと思っていた悲しいって気持ちや辛いって気持ちがこみ上げて来て止まらなかった きっと俺は悲しく寂しく辛かったんだ… こんな時こそ銀にそばにいてほしいと思った 思わず口が動いてしまう 「っぐず…うぇ…ぎ、ん…ぎん…」 「………」 そんな風に銀の名前を呼び、ぼろぼろ涙をこぼしても銀が来てくれることはなかった そのかわり、泣く俺を階段の影からそっと誰かが見ていた…

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