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素敵な勇気

またまなが女子に嫌がらせされとった… 今回のはまなの足を引っ掻けて足を痛めたように装いまなのせいにするっちゅうやつやった… わざとらし過ぎる上に趣味も悪い… 何でまなはあんなことされても全く抵抗したり言い返したりしないんや… そんな風に若干いらいらしながらぼんやりとそのやり取りを見つめていた 「………」 ………本当は…まなが嫌がらせを受けて泣きそうな顔になるたびにおいでって呼んで、膝の上に乗せて、抱き締めて、頭を撫でてやりたかった… まなは子ども扱いするなって言うのかも知らんけどそうやってまなをぐずぐずに甘やかして泣かしてやりたかった… まながオレに助けてって言うてくれれば…もうあんな嫌がらせ受けたくないって言うてくれればいつだってそうしてやった… あとから考えればこれは結局それをしてやらなかったオレのオレ自身への言い訳や… 少なくともこの時まなを助けたのは決してオレやなかった… 「今頬付クン見てたでしょ?男のくせにそうやって頬付クンに色目使って助けを求めようとするなんて…きもちわるいのよ!!」 まなにとって決定的にショックな一言を言われまなはうつむいた きっとまた泣きそうな顔をしてるんやろう 周りでは女子が勝ち誇ったようにわめいている でもまなは何も言わなくてそれに腹を立てた女子がそんなまなの肩をドンッと強く押した 思わず椅子から腰が浮きかけた でもその時まなと女子との間に何か小さい物がさっと走り込んで行ったのが見えた 「や、やめ、なよ…!!」 走り込んで行った小柄なそれはちづちゃんやった まなの前に立って自分よりも身長が随分高い女子を見つめ震える足を突っ張って立っているのがやっとって感じやった さながら肉食獣の群れとバンビや… それでもちづちゃんは怖いだろうに一生懸命口を開いた 「そ…そんな風に押したら…杉田くん…い、いたい…よ…」 「ちょ…ちょっとちづ…」 慌てたようにあのちづちゃんの友達の怪力女が止めるけどちづちゃんはそっちを見向きもせず今にも泣きだしそうな目でその女の子たちを見つめていた まなは突然の事に意味が分からなくなってしまったらしく涙で潤んだ目をぱちぱちさせていた 女子は冷たい視線をちづちゃんに向けそれからお互いに顔を見合わせてこそこそ何か話すとにんまりと笑った ちづちゃん自身何か悪寒を感じたのかビクッと体を震わせていた 嫌な感じやった そして女子たちは突然ちづちゃんの事もどんっと押した 「…っきゃ!!」 後ろにいたまながあわててちづちゃんを受け止める 突然の事にちづちゃんもまなもぱちぱちと瞬きしていた 「『っきゃ!!』だって、かーわいい~」 女子がちづちゃんを茶化すようにそう言う 別の女子がつづけた 「桜井さんさぁ~…そう言えば杉田の事好きだったよねぇ?」 くすくすと笑いながら女子はそう言った ちづちゃんの顔が見る見るうちに赤くなった 「なに?杉田が恋愛でこじれて弱ってるとこで優しくしてどうにかなろうとでも思ってんの?したたか~…」 「べ…べつに…そんな…」 「いいんじゃない?お似合いお似合い、ほらもっとくっつきなよ」 「やっ、やめ…」 調子にのった女子はまなとちづちゃんを押して無理やりくっつけようとしている せっかくまなのために勇気を振り絞って出てきてくれたちづちゃんはもう顔を真っ赤にして泣きそうになりながら足を踏ん張っていた

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