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ちっちゃなプライド
善意からまなと女子の間に止めに入ってくれたちづちゃんにも女子の嫌がらせの矛先が向いた
クラス中の視線が集まる中でまなの事が好きやったとばらされて(まぁ大半のやつが知っとったけど…)ちづちゃんはまっかやった
まなとくっつけって背中を押されて半泣きになってしまっている
「ほら?好きだった…って言うか今でも好きなんでしょ?」
「や、やめてくださ…」
ちづちゃんはいまにも泣き出してしまいそうだった
小さくなって体中震わせ声も震えている
これを見ていた怪力女は今にも飛び出していきそうになっていて、それを藻府に止められ何か藻府に怒っていた
………
別に俺はちづちゃんが嫌いなわけやない…
ええ子やと思うし…
あとから思えばバカな意地やったと思うんやけどこの時まなに対してはまなから助けてって言われるまで助けたりせんと決めとった
やってまなも意地張るんやもん…
でもこのことでちづちゃんが怪我したり嫌な思いをしたりするのは嫌やった
仕方なく椅子を引いて立ち上がる
女子とちづちゃんとまなのやり取りを見ていたやつらの何人かオレの動きに気付いてこっちに驚いたような視線を向けた
そして隣のやつやらとひそひそ話あっとる
…うっとおしい…
そんな事を思いつつまなやちづちゃんのところへ歩いて行った
オレが助けるのはまなやなくてちづちゃんや…
自分にそう言い聞かせてちづちゃんの背中を押す女子の肩に手をかけた
「……もうやめえや…」
「なっ…頬付クン!?」
「えっ…」
そいつは慌ててちづちゃんから手を話すとリーダー格の女子の後ろへ戻って行った
ちづちゃんが口をはくはくさせてオレを見上げまなが驚いたような泣きそうな表情でオレを見とった
お互いにコソコソと話し合い困った顔でこっちを見つめる女子の方に向き直る
「……目障りやねん…そういうの、やめえや…」
「なっ…」
オレがそう言うとリーダー格の女子がわなわなと震えだした
最近オレにやたらとくっついてきとる奴や…
なんか彼女面っちゅうか…うっとおしかってん
「性格悪いねん」
「ッ!!」
そう言うとそいつは顔を真っ赤にしてわなわなと体を震わせ、取り巻と一緒に教室から出て行った
出て行く時にわざとらしくまなの肩にぶつかっていきよったけど無視した
「……はぁ…」
溜息を一つついて自分の席に向かう
後ろを振り向いたりはしなかった
別にちづちゃんを助けたことに後悔なんかないけどなんや自分の中で決めたまなが助けてって言うてくるまでまなを助けないって約束を破ったような気がして釈然としなかった
「ま、まって…」
そんな事を思っていたらちづちゃんが追いかけてきてパッとオレの腕をつかんだ
振り返って目が合うと慌てて手を離す
「あ、あの、あ…ありがと、ございま、した…」
「……ん…」
目を逸らしたままもじもじとそう言ったちづちゃんにひらひらと手を振って返事をしてやるとちづちゃんは嬉しそうな顔をした
その顔をみるとちょっとだけ助けて良かったなと思った…
まなはそんなオレとちづちゃんのやり取りをさっきと全く変わらない位置からやっぱり泣きそうな困ったような顔をして見つめとった
あえてその視線を無視して席に座って机に突っ伏す
この出来事があの事件を引き起こしてしまう原因になってしまうことを今はまだ知らなかった…
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