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報復

銀が助けてくれた…… ぼんやりとそのことを思い出しながら学校に向かって歩く 正確には銀が助けたのは桜井さんだけど… いつもみたいに女子に嫌がらせされてた俺を庇おうと桜井さんが女子との間に入ってくれて、でもそこで今度は桜井さんにあたり始めた女子を止めるために銀が来てくれた ちょっとだけ…ちづちゃんのためだってわかっててもちょっとだけ…銀が来てくれたことが嬉しかった… 「………おは、よう…」 いつの間にかついていた教室に入ってそっと挨拶する 挨拶が帰って来ることはなかったけどもう習慣みたいになってしまっていた 相変わらず集まる視線が痛い 「………」 教室を見回すと銀がぼんやりと自分の席に座って外を見ているのが見えた ……… 銀を見るとなんだか胸がきゅうっと締めつけられるような切ないような気持ちになる うっかりすると泣いてしまいそうだった 目頭にきゅっと力を込めて耐えて自分の席まで行く 「………」 昨日の事であの女子たちも懲りたんだろう、久々に朝何も落書きされていない机をみた なんでもない事のようだけどなんだか嬉しくてまた目頭が熱くなって慌ててこらえた 銀に感謝しないとな… そんな風に思いながら席について何の気なく机の中に手を入れた ………表に見えていなかっただけで嫌がらせは終わっていなかった… 「…?」 べちゃ…っとなにか嫌な感触の物が手が触れた 一瞬動きと思考が止った かたかたと腕を振るわせながら引き出した手と一緒にさらに何かが机の下にばらばらと音を立てて落ちていく 俺の机の下に何か飴のような小さな袋や萎んだ水風船のようなものがちらばった どくんっと心臓が鳴った なに……これ……… 引き出した自分の手を見るとそこにはどろっとしたなにか嫌なにおいのする白い液体が絡み糸を引いていた 床に落ちた萎んだ水風船のようなものの中からもそれと同じような物が流れ出て床を汚している 俺の手に絡んでいた白い液体が糸を引いて床に一滴落ちた 一瞬何が起きたのかわからなかった でも頭より先に体が反応してがたがたっと音を立てて思わず立ち上がって後ずさる こっちを見てた女子がきゃあああああ!!っと大声で叫んだような気がした 「……っはぁ…っは…」 またどくんっと心臓が大きな音を立てている きゅうに周りの音が遠くなって、自分の心臓の音だけが鮮明に聞こえた 息苦しくて呼吸が上手くできない きょ…教室…出なきゃ… そう思うと同時にとっさにドアの方に足が向いたけど結局2歩ほど進んだところで足がもつれ動けなくなってしまった 「っはぁ…っはぁ…」 呼吸が荒くなっていき、ぐわんぐわんとめまいがしだして立っていられなくて思わずその場でへたり込む 遠くで銀の「まなっ!!」って声が聞こえた気がした 自分の手に視線を落とす これ…って… がたがたと体の震えが止まらない 手を見るとやっぱり白いどろっとした嫌な臭いの液体がついていて指の間で糸を引いていた ……これ…って……せい…え… そこまで考えたとたんにぞわっと体を悪寒が駆け上がり強烈な吐き気に襲われた 我慢しようと思う間もなく教室の床に吐いてしまう 「…うえぇ…っう、っは…っはぁ…っはぁ…」 体の震えが止まらずうまく呼吸ができなかった 目の前が真っ暗になって行くようだった

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