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取り返しのつかない
結果的にオレが嫌がらせを受けて戸惑うまなを助けたことになってしまったけれどオレが助けたのはちづちゃんや……
何度もそう自分に言い聞かせてたし多分まなやって別にオレが自分を助けたとは思っとらんってわかっとった
………でも実際は悩んどった……
まなが自分から助けてくれって言うて来るまで俺は何もせんって決めとったのはオレのちっさいプライドのせいやった
まなを助けたら、あの日まなと言い合った『オレはまなとのことをみんなに認めてもらうためにはまなが多少の嫌がらせを受けても仕方ないと思うとる』ってことを認めてしまうような気がした
でもその意思表示のためにまなへの嫌がらせをまなが助けてって言うてくるまで止めないのは黙認するのと同じことなんやないかとも思うた
ホントはずっとまなを助けてやりたかった…
そんな感情が全部ぐしゃぐしゃしてようわからんくなったまま時間だけが過ぎて、結局今回みたいな取り返しのつかんことが起きてしまった…
「………」
今朝もいつもみたいに女子のいらん詮索と好奇の視線を避けるために対して眠くもないのに机に突っ伏しとった…
今日はまなの机に不愉快な落書きもされてなくてホッと安心しとって、そしたらまながやってきていつもみたいに少しオレの様子をうかがって席に着いた
まなも机に落書きがなくて心なしか少しだけ元気なように見えた
でもまなは座ってからたったの少しでがたがたっと大きな音を立ててふらふらと立ち上がった
……どうしたんやろ…
ぼんやりそんな事を思ってる間にきゃあああああ!!っと教室にいた女子の口から悲鳴が上がった
そいつはまなを指差し顔を青くしとった
嫌な予感がした
まながふらっと教室から出て行こうと机の前から動いたことでまなの机の中や床が良く見えた
まなの机の中にはティッシュペーパーとそれについた何か白いドロドロしたものが入っていて、さらには中に同じく白い液体の入った使用済みの避妊具なんかがあった
それが床にも散らばっている
すぐに教室中大騒ぎになった
男子はワーワーと大きな声で騒ぎ立て、女子は悲鳴をあげている
慌ててまなを探すとまなはすぐそこの二三歩行ったとこでうずくまっとった
「まなっ!!」
まなに駆け寄って肩を抱いて背中を撫でてやるけれどまなにはオレなんて見えていないみたいやった
目がせわしなく動いていて焦点が定まらず、顔が真っ白になって、息は浅く、体ががたがたと震えとる…
まなの手には白いねばっとしたあの液体がついて糸を引いとった
嫌なにおいがする…
「っう…っうえぇ…!!」
まなはそれを見ると背中を丸めて吐いた
ごぼっとむせながら教室なことも構わず吐き続ける
まな…まな…
思わず腕に力が入った
一生懸命背中を撫でてやる
「…うえぇ…っう、っは…っはぁ…っはぁ…」
こうしてまなは胃の中の物がほとんどなくなるまで吐き続けた
それでもやっぱり顔色は悪いままで体も震えている
息が浅く胸を押さえながら『っはっは』っと過呼吸のような呼吸をつづけていた
「まな!!まな!!」
オレは必死にまなの名前を呼んで体を摩った
でもまなはそのままくたっとオレの腕の中に倒れるように意識を失ってしまった
頭が真っ白になっていろんなことがひどく遠くでおこっとるような…そんな気分やった
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