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安息
「………」
「…ぅ…ううっ…っう…」
「……まな…」
保健室のベッドに横になったまなが眉間にしわを寄せううんと唸る
額に汗を浮かべて苦しそうに体を捻っては浅く息を吐いていた…
「…まな…」
まなの手をぎゅっと握る
まなは少しだけその手を握り返してきたものの起きなかった
あれからまなを抱え上げて保健室まで運んだ
周りの目やオレのちっさなプライドなんてもうどうでも良かった
まなが大事やった
顔面蒼白になってくたっとしてるまなを抱いて廊下に出ると教室の前にあの女子が立っとってこっちを見とった
体中ぞわっと毛が逆立つような感覚がした
まなを抱いてなかったらそいつらが視界に入った瞬間に女でも容赦せずはりたおしてなかったかもしれない…
こいつが…まなを…
怒りで体がどうにかなりそうやった
まなを傷つけたこいつらも…それを黙認していたクラスのやつも…
そしてなにより今回の原因であり、小さなプライドなんかにこだわって結果的に嫌がらせを黙認して一番まなを傷つけた自分に腹が立っていた…
オレは……オレだけは…何があってもまなから離れたらあかんかった……まなの傍におらんといけんかった…
オレが初めから止めていれば…………まなだけ大事にしていれば………こんなことにはならなかった…
ぎりっと悔しさに唇を噛むと血の味がした
理性のタガが外れてその場でそいつらに感情に任せたひどい言葉を浴びせようとした…
「…うぅ…ううう…」
でもその時まなが小さく唸った
ハッとしてまなを抱きなおす
……………………………今大事なのはオレの怒りの発散やない……まなの安息や……
今度は選択を誤りたくなかった
再度唇を噛んでそいつらを睨みつけて保健室に急いだ
……………………………まな………
そしてこの時、オレはまなと進路の事でもめた時からずっと考えて来てた事を実行しようと決意した…
「……ん…んん…」
「!!」
そこまで考えを巡らせているとまなが唸りながら少しだけ目を開けた
ぼんやりと天井を見上げゆっくりと瞬きしている
「まな…まな…」
「………」
まなの手をキュッと握ってまなを呼ぶ
するとまなはぼんやりこっちに視線を向けた
そして次の瞬間…
「……ッ!!…っはぁ…っは…っはぁ…」
「まな!!」
「っう…うあぁぁあぁあ!!」
まなは目を大きく見開いたかと思うと
大きな声をあげて慌てて起き上がって布団を跳ね飛ばしどこかへ逃げようとした
声にならない悲鳴をあげて半狂乱になって手を振り回すまなをギュッと抱き締めた
まなが振りまわした手がオレの体や頭に当たって痛かったけど気にしなかった
まな…まな…
苦しそうにわめくまなを抱き締め声をかける
「まな…!!大丈夫やから…!!オレしかおらんから…」
「…っは…っはぁ…っは…っは…」
しばらくそう声をかけ続け背中を摩ってやるとまなは次第に落ち着いて行った
そして徐々に落ち着いてくるとまなは震える手でぎゅうっとオレの体に腕をまわしてきた
はぁはぁと荒い息をはき、冷や汗をかいて冷たくなった体をオレに押し付け縋るように強くしがみついている
まな…
それに応えるようにオレもまなを強く抱き返した
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