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キスして
………
確かに銀の言ってることはその通りなのかもしれない…
始めオレとの関係を肯定したのは銀だし、その後あんなことになるとは知らずにではあったけど学校に来なくなって…
しかも学校に来てからもすぐに俺を助けてくれたりはしなかった…
…………
ぽすんっと銀の肩に顎を乗せるとぴったりとはまって安心した…始めからそう収まるべくしてそういう形になっているんじゃないかと思うぐらいすっぽりと収まっていた
……………でも…実はそんなに銀に対して怒りの感情は湧いていなかった…
「ごめん、まな………ほんまにごめんな…」
「………」
銀は何度も何度も絞り出すように俺に謝った
俺はそれを銀の体温と匂いに包まれたまま聞いていた
怒りが0かと言えばうそになる
嫌がらせを受けてた時、本当に辛かった…銀にもう知らんって切り捨てられたことも辛かった…腹も立ったし悲しくもなった…
でも何より銀に触れることができないのが一番つらかった
自分から上手に甘えたり頼ったりできないからずるずるとここまで来てしまった…
素直に「もう一度話がしたい」って…「仲直りしよう」って言えなかった俺にだってきっと責任はある…
「…………」
「…………」
しーんと沈黙が流れる
授業中だからか人は全く来なかった…
「……ごめん…」
「………」
銀はスリッと俺の肩に顔をすり寄せ最後に細くそう言った
返事をしようとゆっくり口を開いた
「……だ、いじょうぶ…だ、よ…」
「………」
「あ、りが…とう…」
カラッカラになった喉から何とか声を絞り出した
今は銀がこうやって俺のそばにいてくれることが嬉しかった
少し銀から体を離して銀の顔を見上げると銀は悲しいような優しい顔をしていた
その顔があまりにもきれいで思わずどきっとする
銀がそのままゆっくりとした動きで俺の頬に触れ、髪を撫で、目元にちゅっとキスをした
思わずきゅっと目を閉じる
そんな銀の手が優しくてまた涙があふれてきた
何度も銀が俺に優しく触れる…
髪を梳くように手をからめそこから手を滑らせて、耳の後ろを撫で、頬に触れ、頬骨をなぞりながら首に手を這わせていく
そして同じように俺の髪にキスしてそのまま耳、目元、頬、首とキスした
静かな部屋に布が擦れる音とちゅっちゅっというリップ音だけが響く
気持ち良かったけれどいやらしさはなくてなんだかじんわりと暖かい感情が胸に広がった
さっきまでの嫌なことが少しだけ小さくなって、その代わりに久しぶりに幸せだなって思えた
銀は何度も何度もそれを繰り返す
そして最後には俺を強く抱きすくめて唇に長くキスをした
舌は絡めなくてただ唇を合わせているだけのキスだった
っちゅっと音が鳴ってゆっくりと唇が離れる
それでも銀は自分の額を俺の額と合わせてお互いの吐息がかかる距離を保ったままじっとしていた
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