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決意
銀が俺に別れようって言った時、嫌われたんだと思った…
みんなの前でとっさに銀と付き合ってなんかないなんて嘘言っちゃって…その後もなかなか銀にごめんねって言いにいけなくて…ずっと嫌がらせを我慢してうじうじしてるだけの俺に銀はもう愛想を尽かしたんだと思った…
でも銀は考えてほしいと言った
遠距離恋愛や、男同士で付き合うことについて、改めて一人になって考えてほしいって…
そしてまた銀も考えたいと言った
俺の事、銀自身の事や進路、そしてその先について…
だから一度距離を置いて離れたいって…
そんなの付き合ったままでだってできるじゃないかって思ったけど、そうしたらきっと俺は銀と付き合ってることに甘んじてそんな事考えないままにしてしまう…
銀だって同じなんだろう…
俺達は知らぬ間にお互いに強く依存し合っている…
「………」
「………」
かちかちと時計が進む音がする
どれぐらいたったのかわからないけれどもうすぐ授業が終わるはずだ…
銀は俺が考えている間ずっと俺の背中を撫でていてくれた
その銀の温度が優しくて胸の奥がきゅうっとなる
俺は……
銀と初めて会った高2の5月を思い出した
始めは軽そうなやつだなぁと思った、俺と真逆の社交的なタイプで、女子からもモテて、何一つ不自由していませんみたいな…ていうか実際そう言うやつだった
だからこそなんで俺なんだろうって不安で、いっつも妥協とかそう言うので付き合ってるんじゃないかって自分に自信が持てなかった
でも、内海先輩とか志波とか桜井さんとか静香さんとか金さんみたいな人とかにも会って…いろいろあって…銀が俺を好いてくれてるって良くわかって…俺も銀の事が好きなんだと…愛してるんだと思うようになっていった…
じわっとまた涙が滲んだ
俺は…
きゅっと唇を噛んで涙をむりやりこらえる
それでも溢れてくるからカーディガンの袖口で乱暴に目元をぬぐった
次の涙があふれてこないうちに顔を上げる
銀が静かにこっちを見ていた
「……わかった…」
「………」
「………考える…ちゃんと考える…から………銀とわか…れ、る…よ……」
「………」
最後のところは声が震えて思わず涙が出た
考える…しっかり考える…
銀の事も、俺の事も、遠距離の事も、進路もその先も……
溢れた涙が止まらなくて悲しくてたまらなくなって銀の胸に顔を押し付ける
嗅ぎ慣れた安心する銀の匂いがした
「……三月の中旬に…」
銀がゆっくりと口を開いた
「…T大の合格発表がある…」
「………」
「………待っとって…」
そう言って銀は今までにないぐらい強く俺を抱き締めた
胸が苦しくて潰れてしまいそうだった
でも…大丈夫……
俺も銀を精一杯抱きしめ返した
きっと大丈夫…
そうやって俺達はチャイムが鳴るまでずっとそうしていた
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