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あれから…
「………」
あれから数週間がたった…
銀と別れてから俺への嫌がらせはぱったりとなくなった
別れて数日は誰も話しかけてこなかったけれどしばらくすると数人の男子が俺と銀に好奇の視線を向けていたことを謝りに来た
桜井さんと久遠さんはきっと二人で考えてくれたんだと思う、今まで通り接してくれる
健斗も猛も俺と銀が別れたことを噂で何となくは聞いたんだと思うけど気を使ってか何も聞いては来なかった
そして藻府が謝りに来た…
どうやら噂を流したのは藻府だったらしい…
たまたま銀と俺の関係を知ってしまってそれを秘密にしておくことができずに部活の友人に言ってしまったらしい…
自分の甘さが原因でこんなことになってしまって本当に申し訳なかったと、謝って許されることじゃないかもしれないけれどと涙ながらにそう告げて頭を深くいつまでも下げていた…
でももう噂の大本が誰かなんてどうでも良いことだった
それにいつかはこうなっていたんだと思う…
たまたま今回のきっかけが藻府だっただけで、きっといつか誰かにばれる時が来ることだったんだ…
だから藻府が謝ってきた時もそこまで怒りを感じなかった
『どうでもいい』というのが正直なところだった…
「………」
ぼんやりと教室内の景色を眺める
結局あれから何度も考えたけれど銀と俺にとって何が最善なのかはわからないままだった…
銀と別れるのは絶対に嫌だと思った
でも銀と離れ遠距離恋愛になった時に俺は一か月に一度…またはそれ以下の頻度で銀に会って、あとは電話とメールなんて生活に耐えられるのかと自分に尋ねてみても何もわからなかった…
毎回同じ思考の繰り返しだ…
でも俺だってそのことばかり考えているわけにもいかず刻一刻と大学受験は近づいていた…
そしてそれは銀にとってもそれ以外のクラスメイトや同級生にも言えることだった…
「……頬付ー…呼び出しー…」
「…んー…今行くわ…」
「………」
銀はあれからモテるようになった
正確には前からモテて、告白されてはいたけれど、それ以上に告白されるようになっていた
以前銀に告白した子たちが俺が銀と別れたことで、今まで自分たちがフラれたのは俺がいたせいで、そんな俺と別れた今なら再度自分たちにもチャンスはあるんじゃないかとこぞって呼び出し、告白しに来ているからだった
そしてさらにそれ以外のまだ思いを告げていなかった子たちも俺と銀がわかれたことである意味背中が押され、さらに銀の卒業が近いからと毎日ものすごい人数の告白希望者が銀の所に訪れていた
不安な気持ちが無いと言えばうそになる…
銀に告白しに来る子はみんなかわいらしく、華奢で、柔らかくて、いい匂いのしそうな女の子たちだった…
毎日自分を鏡で見るたび暗く重い気持ちになった…
でも俺は銀を信じてる…
そしてその信頼は今のところ裏切られてはないみたいで銀が女の子と一緒にいるのを見たとかそう言う噂は立っていなかった
こんなことでホッと安心するような自分にも腹が立った
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