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真摯な答え

「…あ、あの…私入学した時から頬付先輩の事好きで…その…話したの…前たまたま落としたペン拾ってもらったときだけで…先輩…覚えてない…と思うんです…けど…」 「………」 今日、4人目や…… まなと別れて数週間たった… あれから急に告白してくる女子が増えた… 同級生、先輩、後輩…今回は後輩やった… オレはその子の事もペンを拾ってあげたことも覚えとらん… 目の前でもじもじと体を揺らしながら話す女子の言葉に耳を傾ける 頬を赤くしてなぜオレを好きになったのかを一生懸命に語った… 「それで…その…先輩が…す、杉田先輩と…その…そう言う意味で付き合ってたって言うのも分かってるんですけど…も…もしよかったら私と付き合ってください…」 「………」 きゅっと目をつむって頭を下げる すこし前までやったら…すごい適当にあしらって…終わったんやろうなぁ… まなと付き合っとった時やって告白はされとった 基本的にいつもまなと一緒やからタイミングがないと言ったって下駄箱に手紙を入れたりなんて言う方法をとる子もいれば、みんながいる教室に来てその場で告白するような子やっておった… そんな子には大概『恋愛を考えられない』とか『身軽でいたい』とか『良く知らない』なんて事を言って断っていた もちろんまなとのことがナイショやったから真剣に理由を説明して断れないというのはあった… でもそのことを差し引いても真剣に返しとったかって言われたらそうではなかった… 「…?あの…先輩…?」 「………」 オレに告白してきた子が恐る恐るといった感じでオレの顔を伺う 正直言うと面倒な話やと思うとったしオレにとってはまながすべてでそれ以外からの好意なんてどうでもええとおもっとった ………きっとこの子も…散々迷ってドキドキして勇気をかき集めてオレに告白しに来たんや… 保健室でオレに思いを告げたまなと…まなが何よりも大事だと告げたオレと何も変わらん… そう思うと適当に断るなんてひどいことできないと思った… きょう4回目の言葉を口にする 「……ゴメン…」 「………」 「付き合うことはできない…」 そう告げると相手の女の子は目に涙を浮かべてうんうんとしきりに頷いた 「……好きな人がおる…そいつ意外と付き合うことはできない……ゴメン…」 これがいまのオレの精いっぱいやった 女子が黙ったまま涙をこぼし深く頭を下げてそのまま走りさって言った 「………っはぁ…」 その場にしゃがみこんで、たったいま告白してきた女子の走り去った方向を眺めた 思い出したのは保健室で泣きながら震える手でオレに触れ好きだと何度も言ったまなやった まなの柔らかい感触を思い出す あの時、まなをもう離したくないと、自分から手放したりしないと強くそう思った… 「……ははっ…」 そう思うとなんだか今の現状がおもしろくおもえて思わず笑ってしまった 手放したのはオレや… やから…まながどういう答えを出そうとも受け入れるつもりやった…

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