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現場

「お、杉田掃除?じゃあな~」 「あ、ばいばい…」 掃除当番で教室の小さなゴミ箱を持って廊下を歩いていると、俺の横を同じクラスの男の子が駆け抜けて行った 俺に声をかけて手を振ってくれる ……銀と別れてからさらに少し時間がたった このころになるとさらに何人か俺に話しかけてくれるようになってきて、完璧にではないものの以前のような生活を取り戻し始めていた でも銀とのことについての答えはまだまったくと言っていいほど出てなくて焦るばかりだった 受験だって刻一刻と迫っている 「………はぁ…」 やらなくてはならないことの多さに思わずため息が出た あれからも銀への告白の数は増えている 先輩後輩同級生…休み時間のたびに誰かしらに呼びだされていて、ほとんど教室にはいなかった ……俺だってそのことに危機感を感じてたくさん考えた…でも… 「……はぁ…」 再度深くため息をついた その時… 「……て…」 「………」 「……?」 何か声が聞こえた気がした こんなゴミ捨て場しかないような学校のはずれで珍しいなと思った 俺と同じで掃除当番の人かな…? そういえば銀と付き合ってた時は良くこの近くの階段裏につれてこられた… 声は少しづつ大きくなっていく やっぱり俺の進行方向に誰かいるらしい その時点で俺はそれが何の声なのか気づくべきだったんだ… 何となく、その声の元を探しながらゆっくり歩いた そして声が大きくなるにつれてあることに気付いた 「…で…お友達……付き合ってほし…」 「……あぁ…」 その声を聞いたとたん体中の血液がどくんっと波打ったような気がした 『あぁ…』なんて短いフレーズだったけれど聞き間違えるはずない… 聞きなれた…良く馴染んだ声… どくんどくんっと心臓の音がうるさかった だめだってわかってるのに近づこうとする足を止めることができない 声が聞こえてくるのはちょうどゴミ捨て場の辺りだった

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