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何でもない関係
だめだと頭ではわかっていたのに自分の足を止められなくて声の方に近付いた
どんどん声が大きくハッキリと聞こえてくる
「もちろん…杉田くんとのことも知ってて言ってるんだけど…」
「………」
そしてゴミ捨て場に出るための裏口に続く廊下の手前の角から覗くとそこには予想通り銀と頬を赤く染めた同学年の女の子がいた
銀の正面に立ってうつむいたりもじもじしたりしながら話している
ぱっちりした目に高い鼻、白い肌…その顔になんだか見覚えがあった
……たしかあの女の子…読者モデルやってるってすごい男子に人気のある子だ…俺でも名前知ってるもの……
でも銀はそんな女の子に告白されも表情一つ変えていなかった
「今、まだ好きじゃなくてもいいの…少し付き合って…これから知って行ってくれれば…」
「………」
ドクンと心臓が波打ってなんだか苦しくなる…
銀が告白されてる…
何度も話には聞いて知っていたしわかっていた
でも目の前で目の当たりにしたのは初めてだった…
「だから…少しだけチャンスをくれないかな…」
「………」
銀に告白した女の子のかわいらしい顔がとても輝いて見えた
銀と並んで…とても絵になる図だった…
………俺は…?
そう思うと急に苦しくなって、くらっとした立ちくらみに襲われた
思わず手に持っていたゴミ箱を落としてしまう
俺の手から離れたゴミ箱は派手な音を立てて廊下に落ち、中に入っていたゴミを周りに撒き散らして俺の足もとに転がった
自分がゴミ箱を落とした音でハッと我に返る
顔を上げると驚いた顔の女の子と銀の顔が目に入った
すると急に自分がひどく惨めな気がしてきた
目に涙がせり上がってきて苦しくて悲しい気持ちになってくる
「……ッ!!」
「!!学!?」
気付いた時には二人に背を向けて走り出していた
落したゴミ箱も気にせず走る
目からは涙が流れた
銀は告白されてただけだ…別に何も答えていない…でも…
銀とは…今、恋人でも何でもないんだ…銀が告白されてたって…もし誰と付き合ってたって今の俺には関係のない事なんだ…
苦しくて、悲しくて、胸が痛かった
喘ぐように息を吸いながら走る
気付いたらあの階段裏に来ていた
隅に置かれたマットの上に体育座りをする
自分の膝に顔を押し当てた
銀と別れて…銀とのことを考えてどうするか決めようって話したんだ…
言いだしたのは銀だったけど俺もそれに合意したんだ…
体が小刻みに震えていた
銀が一瞬でも誰か…俺じゃない誰かと一緒になるんじゃないかと思うだけでこんなに悲しい…
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