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恋人の権利
またいつものように女子に告白されていた…
なんや読者モデルをやっとる女らしい
顔もかわいらしく、スタイルも良く、少しだけ話した感じも悪い感じはしなかった
まなとの事も知っての上でオレと付き合いたいんやって…
「だから…少しだけチャンスをくれないかな…」
「………」
そう言ってはにかむ彼女は可愛いと思う
でもそうは思ってもまなに感じるような熱は感じなかった
そう思って口を開こうとしたとき背後でがたん!!っと何かが落ちる大きな音がした
ころころと丸められた紙が俺の足に当たる
後ろを振り返るとそこには蒼い顔をしたまなが立っとった
足元には教室に置かれているゴミ箱が転がり中からゴミが散らばっていた
「……ッ!!」
「!!学!?」
オレがそう言ったのとまなが走り出したのは同時だった
はらはらした様子でオレらを見守ってた女子に振り返る
「ごめん、返事後でもええ?」
「あ…その…わざわざしに来なくても…その…」
その子はうつむいてそう言った
今のオレを見ればわかると言いたげだった
昔ならそもそもそんなこと言わなかったしラッキーなんて思ってたかもしらん
でも…それは…
「いや、ちゃんと返事しに行くわ」
「……!!」
そうその子に言ってまなを追った
まな…
気持ちを切り替えて走る
まなの姿はもう見えなかったけれど何となくどこにいるかはわかる気がした
多分あの階段裏や…
そしてやっぱりまなはそこにいた
隅っこのマットの上にうずくまっとる
泣いとるみたいやった
「……まな…学…」
「ッ!!」
そっと声をかけるとまなは体を震わせた
俯いたまま慌てて涙を拭っている
「な…なに…?」
「……大丈夫?」
「へ…あ…だ、大丈夫…大丈夫…へへっ…」
手を振ってできるだけ平静を装おうとしとるけど涙が止まらんみたいでこっちを向きはしなかった
オレに泣いてるのを見られたくないらしい
「ご…ごめ…見るつもりなかっ、なかったんだけど…その…俺掃除当番で…それで…」
「…学……」
『ごめん…ね…』って、ははって無理に笑いながら言うまなを見るのは辛かった
『大丈夫やないやろ?』って言って、抱き寄せて、触れて、涙を拭ってやりたかった
そのまままなを抱きしめてたくさん泣かせて『まなが一番やから不安にならなくてええんやで』って言ってやりたかった
でもそれは『恋人』のセリフで行動や…
ぐっと自分の唇を噛み、まなの肩に伸ばしかけた手を引いた
「……そう…」
「…うん」
もっと声をかけてやりたかった
でもそれじゃあわざわざ別れた意味がない…
もしまなと遠距離恋愛することになったらそれこそすぐ声をかけてやることなんてできないんや…
ひどく自分が無力に感じで悔しかった
「………じゃあ…オレ、行くな…?」
「…うん」
弱ったまなに何もしてやれないことをもどかしく思いながらそのまままなに背を向ける
あの子にも告白の返事をしてあげなあかん…
振り返りたい衝動を必死に抑えながらその場を後にした
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