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胸の痛み

「……ッはぁ~あ…」 グーッと椅子の背を利用して後ろ向きに伸びをする 机の上には参考書や赤本やノートなんかの勉強道具が乗っていた ペラペラとノートのページをめくってみるとそれなりの量進んだらしい 時計を見るともう夜中やった 「………」 ぼんやりと窓の外に視線を向ける 真っ暗な中にいくつか窓の明かりが見えた ………まなもまだ勉強がんばっとるんやろか… 何となくまなに電話してみたくなる まなと付き合っとった時ならきっとすぐ電話かメールしとったと思う ……声聞きたい… 「……はぁ…」 ぎしっと椅子の背もたれをきしませながら天井を見上げる 会えない触れないのは覚悟しとったけど見ることも声を聞くこともできないのがここまできついとは思っとらんかった っぐっぐと手を開いたり閉じたりしてみる まだまなの体のあのやーらかい感触が残ってないかと思ったけれど良く考えてみればまなにちゃんと触れたのは確かあの保健室で別れようって言うた時が最後やった… 最後にえっちしたのなんかもっともっと前や… 「…………はぁ~あ…」 まだ眠くはなかったし、勉強やってしようと思えばまだ復習しようと思うとる範囲はのこっとったけどそんな気分でもなくなってしまった 椅子から腰をあげて服を脱ぎ適当にシャワーを浴びた スウェットを穿いて上の着替えも出そうとTシャツの引き出しに手を伸ばした …隣の引き出しにはまなの着替えが入っとる… 「………」 思わず手が隣の引き出しに伸びて一番上からまなが着とった部屋着のTシャツを手に取った 重症やとおもう… 「…はぁ」 溜息をつきながらベットに体を投げた なんかもう着替えるのもめんどくさかった 「………」 手に持ったままのまなのTシャツを抱いて顔を押し付ける 懐かしいまなの匂いがした おちつく… そのまま目をつむった …………まなは…どんな選択をするやろうか…… オレはズルい… あの時、オレはまなに別れることも視野に入れて考えてって言うた… でもまなは絶対に別れるなんて言わないって知っとった… 知っとってそう言った… でも…… あの穏やかそうに笑ってオレを努めて友人のように扱うまなを思い出した まなはもしかしたらもう戻ってこないつもりなのかも知らん… そうなっても大丈夫だとオレに示そうとしてるのかもしれない… ズキンと胸が鈍く痛んだ ……いやや… ぎゅっと強くまなのTシャツを抱いた ……いやや……でも…………まなの選択や……… そうして目をつむってじっと胸の痛みに耐えているといつの間にか眠ってしまっていた

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