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誕生日
銀と別れて、ひとりでも強くなって、銀と離れても笑顔で行ってらっしゃいって言えるようになるんだって、そう決めて…それからずっとつっぱって生活してきた…
いろんな気持ちを我慢して、辛いことにも耐えて、極力笑ってようと心がけた
勉強だって今まで以上に根を詰めてやった
そうやって忙しくしていると銀の事を少しだけ忘れられた
………でも…
「………」
ふとした瞬間銀の事を思いだす
冬休みに入って銀とは一度もあってないし、メールも送ってない…電話だってもちろんしていない…
それは恋人がすることだと思ったから…
声…聞きたいな…
何度もそう思った………
そしてそうこうしているうちに冬休みも進んでクリスマスが過ぎあっという間にオレの誕生日だった…
「ハッピーバースデイ学!お誕生日おめでとう!」
「学さんおめでとうございます」
「おぉ…」
机の上には母さんと猛の作った料理やケーキが並んでいる
受験前だからあまりに大きくは祝えないけれどそれでもって母さんと健斗たちが時間の合間を縫って用意してくれた
今年は祝ってもらえないか…祝っても一人で…それかせいぜい母さんとケーキ食べるぐらいだろうと思ってた…
なのにこんなにちゃんと祝ってもらって……
じーんと胸が熱くなった…
母さんと猛が作ってくれたごちそうを食べ、みんながプレゼントをくれて、ろうそくを吹きけし、ケーキを切り分けて食べる
イチゴの入ったケーキを口に入れていると口の周りを生クリームでいっぱいにした健斗が声をかけてきた
「………学、たのしい?」
「……たのしいよ、ありがとう」
楽しかったしみんなに心から感謝してたからそう言って健斗の口元を拭ってやった
多分今回もさりげなく俺を心配してたんだろう
あとから聞いたけど、こうやって俺の誕生日を祝おうって言いだしたのは健斗だったらしい
健斗には本当に感謝してる
…………………でも………
どうしてもここに銀がいてくれたらって思わずにはいられなかった
つきんっと胸がいたむ
無理だってわかってるのに……
でも一度その考えに取りつかれてしまうとなかなか抜け出せなくて健斗と猛が帰った後も胸はじんじんと痛んだ
母さんに一言感謝を告げてから二階の自分の部屋に戻る
でも一人になるとより一層その気持ちが大きくなって寂しく感じた
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