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数言数秒
「もっ…もしもし…!!」
いつもなら公衆電話からなんて少し出ることをためらうけれど今日は少しもためらわなかった
通話ボタンを押しながら立ち上がって教室を出る
もうすぐ先生が来そうな時間だったけれどそんな事気にしてなかった
思わず声が上ずる
そして帰ってきた声は…
『あ、学?』
「…ぎん…?」
『ん、ひさしぶり……』
銀だった
久々に聞いた銀の声にホッとする
思わずじわっと涙が滲みかけた
『元気?』『受験どうだったの?』『俺は合格できたよ』『なんで学校に来ないの?』『今どこにいるの?』『会いたいよ』………『……俺はちゃんとどうしたいか決めたよ…』
聞きたいこと、言いたいことがたくさんあるはずなのに感極まってうまく口から言葉が出て行かなかった
『ずっと連絡できなくてごめんなぁ…あ、泣かんでな?』
「な、泣いてない…」
『あれ?絶対うるっときとると思ったんやけど』
銀がからからと笑う
銀にそう言われ目に滲んでいた涙を拭った
いつも通りの銀で喉の奥が熱かった
『スマホ持ってくの忘れてん』
「…え…銀今どっかいってるの…?」
公衆電話からだから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけれど銀の背後からはいろんな雑音が聞こえていた
人が行きかう音、その人たちの声、何か引きずるような音に機会が動く音…そして何かのアナウンスの音が聞こえた
………駅…?
『……ゴメンあんまり時間ないねん、明日は絶対学校行くから』
「え…」
『明日…待っとって…』
「え、ちょ…ぎ…」
でも俺が銀を呼び終える前にガチャっと音がして電話は切れてしまった
ツーツーと通話終了の音が虚しくスマホから響いていた
『明日…待っとって…』
電話で銀が言ってた言葉を反芻する
数言だけ…数秒の短い会話…って言うかほぼ一方的に銀が話しただけだったけどそれらの言葉を何度も繰り返すと銀がそばに感じられる気がした
明日……卒業式…
心臓がどきどきとうるさく、頬が熱かった
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