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三年
卒業式の日の朝…
「………ん…」
目覚ましのなる3分前に目が覚めた
昨日の夜はドキドキしてなかなか眠れなかったはずなのにやけに気分はすっきりしてた
「あ、学おはよう、制服アイロンかけといたわよ!!」
「おはよう母さん、ありがとう」
「おはよう…卒業おめでとう…」
「ありがとう父さん」
下の階に降りると朝ごはんのいい匂いがしてニコニコと満面の笑みを浮かべた母さんとソファに座って新聞を読みながらコーヒーを飲む父さんがいた
わざわざ休みを取ってきてくれたらしい
久しぶりに家族三人そろって朝ごはんを食べ、母さんがアイロンをかけてくれた制服に袖を通すと高校三年間の思い出がよみがえってくるような気がした…
高1の時は健斗と同じ高校で良かったななんて安心したり、サッカー部に入ろうかなやんだり、初めての一人での生活に戸惑ったり迷ったりしながら頑張ってたっけ…
無難に、普通の高校生をやってたきがする…
そして高2の5月に銀が転校して来て俺の人生はそれこそ一遍した
男とキス…というかその…キス自体…初めて…だったし…あんなことするようになるとも、あんな関係になるとも思ってなかった……
同性が好きな人の事を知識では知っていたけどまさか自分がそうなるなんて思ってもみなかった…
たくさんドキドキして、いろんな人に迷惑をかけ、いろんなことがあった…
ふっともう何度感謝したかもわからない内海先輩の顔が頭に浮かんだ、銀とうまくいかなくて、好きなのに素直になれなくて…苦しくて、悔しくて…
そんな俺に声をかけて優しくしてくれて、最後には自分の気持ちを殺してでも俺の背中を押してくれた…
そう言えば猛と知り合ったのも高2だ…
始めはデカい金髪のやつが健斗に弁当を持ってきた時びっくりした
あんな派手なガラの悪そうなやつとつるんで健斗は大丈夫なんだろうかって初めは思ってしまった
でも銀と何かあるたびに話を聞いてくれたり仲介役をしてくれたり…
いいやつなんだなと思った
そして志波の顔が浮かんだ
始めはホントに良くわからないやつだなと思った
拉致されるし…監禁されるし…………思い出したくないようなこともさせられたし…
でも根は悪いやつじゃなかった…きっと今もイギリスでモデル業に精を出しているんじゃないんだろうか…
桜井さんはチョコレートをくれて俺に告白してくれたのも高2だ
高1の時の委員会も一緒で結局この間の事も、夏祭りの時もいろいろ迷惑かけてしまった
でもこんな俺を好きだと言ってくれた…
そして3年になって
さらにたくさんの人と出会った
猛の後輩の若葉ちゃんは最初犬っぽいって印象を持ったのを覚えてる
結局志波?と仲良かったみたいで志波がいなくなる日に校庭で大泣きしていた
銀のお兄さんの金さんはあった時はホントに驚いた
見た目は銀とそっくりだったけどやることなすこと飛びぬけていてなんていうか…さすが銀のお兄さんだと思った……悪い意味で…
銀が怒るからあまり言わないけど今でもちょこちょこ銀に似てるな~って思ったりもする
銀の元カノの静香さんもいい人だった
男なのに銀と付き合ってる俺にも寛容でいろんなことを教えてくれた
優しくて素敵な俺とは正反対の大人の女の人って感じだった
…………銀に出会ってからほんとに…ほんとにいろんなことがあった……
鏡の前でネクタイを結びながら思い出す
思い出しきれないほどたくさんの思い出があった
………銀…
今日は銀に気持ちを伝える日だ…
再度鏡の中の制服を着た自分を見ると以前よりほんの少しだけ大きくなったような気がした
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