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待っている

そうやって健斗とゆったり三年間あった事やそれよりも前の事の話なんかをしているうちに他のクラスメイトもやってきて教室はだんだんうるさくなっていった 「……………」 でも銀はまだ来ない… だんだん不安になってきた でも…銀、今日は来るって言ったんだ… 『待っとって?』って… 暗くなりかける気持ちを無理やり前に向かせる 教室の中でも受験が終わって登校期間始まっても今まで一度も学校に来てない銀の話がされていた… 「ねぇねぇ、今日銀くん来るのかなぁ?」 「来るでしょ?さすがに」 「私銀くんの第二ボタン欲しいのにぃ~!!来てくれないと困る~!!」 「ちょっと!!私だって狙ってるんだからね!!」 「えぇ~!!興味ないとかちょっと前まで行ってたじゃん!!」 「知らないよ、どっちがとっても恨みっこなしだからね!!」 「そんなぁ~、ただでさえ倍率高いのにぃ~!!」 と…こんな話がいろんなところでされていた 高校生活の締めくくりにずっと好きだった銀に告白して第二ボタンを貰うのだと言ってる子もいれば、記念に何としても銀の第二ボタンが欲しいという子もいる… お守り、記念、『頬付銀』というブランド…… なんだか女子の間で銀の第二ボタンはすでに相当なプレミアのついてる者みたいだった… なんだかだんだん心配になってきた これ…銀がもし来ても俺と二人きりとかなれる機会とか…あるのかな… ハハッと苦笑いしていると教室にいて外を眺めていた男子の一人が突然大きな声を出した 「あっ!!おいあれ!!頬付じゃないか…?」 教室にいた奴らが皆、窓に近付いて外を見た 俺も自分の席に座ったまま身を乗り出して外を見た すると生徒用玄関に向かってだるそうに歩く見覚えのあるピンク色の頭が見えた ……銀だ… 思わずじわっと涙が出そうになった ……ほんものの…銀だ こぼれそうになった涙を慌てて拭う 顔を上げると目があった健斗は自分自身の事かのように喜び輝くばかりの笑顔を向けてくれた 「銀くんきたよ!!いこいこ!!」 「えぇ~でもまだ卒業式も始まってないし…」 「そんな事言ってたら第二どころか全部なくなっちゃうよ!!」 その声にハッとして改めて周りを見回すと、数人の女子が教室から走り出て行くのが見えた 大きな声で仲間内で話しながら教室から出てる 「ほら!!急がないと!!他のクラスの子ももう行ってるよ!!」 「頬付くんの第二ボタン争奪戦!!出遅れちゃう!!」 争奪戦って… さらによく見てみるとこのクラスからだけじゃないらしく 隣の教室やさらにその向こうの教室からも女の子が出てきて、廊下をはしっていくのが見えた 皆頬を赤くし早く早くとお互いを呼びながら走って行く ……銀… そんな様子を見てると心の中に漠然とした不安が湧いた ………………………待ってるからな…

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