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招かれざる客

完璧に甘く見とった… いくら心臓に一番近いからやなんたら言うやって、ジンクスがあるって言うたって…たかがボタンやとなめてかかってた… 卒業式の前からすでにこんな… 「ぎんくぅ~ん!!」 「きゃぁー!!」 「ちょっといったい!!引っ張らないでよ!!」 「やんっ!!あっち行きなさいよ!!」 「ちょっと…制服ひっぱったらあかん言うとるやろ!!」 「そーよ!!やめなさいよ!!」 「誰よ!!引っ張ってるの!!ルールぐらい守りなさいよ!!」 ぎゅうぎゅうと四方八方から女子に押される 校舎に入った途端ばらばらと女子が周りに群がって来たかと思うとみんな口をそろえて『第二ボタンをくれないか』と言い出した 始めはいちいち丁寧に断っとった やってまなおるし… 貰ってくれるんやったらまなにあげたいしまなのが欲しい でも何人か断ってるうちに気付いたら周りが女子だらけになっとった 下駄箱の前から一向に進めない… 自分がモテる自覚はあったけどでもこの数は… どうやら対して興味もないけれどお祭り気分で参加しとる奴もいるらしい しかもついには手を伸ばして制服を引っ張る奴まで現れた くっそ…全然進めん… 鞄を体の前で抱いて制服をガードしながら人をかき分けて進む 「あぁ~ん、銀くんまって~」 「待って~やないやろ!!卒業式あるやんか!!」 「えぇ~」 そうや…こいつらの担任は何しとるんや!! なんとかしてこの人垣を抜けんと… 辺りをきょろきょろ見回す すると近くに見知った顔を見つけた あれ…? でもなんでここおるんやろ? そんな風にも思ったけど今はここを抜けることの方が先決やった 少し離れた位置にいた彼女に手を伸ばしてぐいっと引き寄せる 彼女は『ぴゃっ!!』っと声を出しておろおろしながらよろけてこっちに来た 怯えたような顔でそろそろとこちらを見上げたのはちづちゃんやった 周りにあの怪力女も見当たらない ちづちゃんは俺に首根っこを掴まれて小動物みたいになっとった ………かっる… 「ちづちゃんやん、奇遇やな?どしたん?なんでここおるん?」 「え…あ…ぴ、ピンクの人!!」 「ちづちゃんもオレの第二ボタン欲しいん?」 「へ…だいにぼたん…?な、何のことです、か…?わ…わたし、トイレ行って…教室…戻ろうとしたら…ひ、ひとがどばって…それで…」 「あ~…」 あのっ、あのっと言葉を詰まらせる涙目のちづちゃんをなだめる どうやらちづちゃんはトイレの帰りにこの人ごみに飲み込まれてここまで流されてきてしまったらしい… まぁ…そらそうやわな…まなの第二ボタンならまだ可能性はあるやろうけど…オレのボタン欲しいなんてタイプでもないやろ… でもラッキーやった…教室まで行けるかもしらん… 「ちづちゃん?ちょっとこれもっとって…」 「…へ…?は、はいぃ…」 きょとんとしてオレを見上げていたちづちゃんに俺の鞄を渡す それからボタンを取られないように気を付けながら急いでブレザーを脱いだ それをちづちゃんの頭にばさっとかぶせる ちづちゃんは『わっ!!』と声をあげた

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