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待っとって
「………」
銀が窓の外に見えてからしばらくたったのに銀は全く教室に来なかった
……なにか…あったのかな…
もうこれ以上何があるって言うんだ…
不安になる
探しに行こうかな…でも入れ違いになっても困るし…
そしてそんな思考を何度も繰り返してとうとう我慢できなくなって探しに行こうと腰を浮かしかけた時、教室が突然ざわっと騒がしくなった
反射的に顔を上げる
するとそこにはなんというか…
制服がはだけて、額に軽く汗をかき、はぁ…っと熱く吐息を吐く……なんか…無駄に色気たっぷりな銀がいた…
……なんでこいつこんな色気ダダ漏れにしてるんだ…
そして少ししてから気づいたけど銀は何かを持っていた
銀のブレザーに包まれた何かがもぞもぞと動いている
…?
銀はそれをそっと床におろすとそれにかぶせていたブレザーを取った
「はい、ちづちゃん到着、助かった、ありがと」
「へ…はぇ…?」
「ほら…怪力女のとこいっとき、また流されるで」
「誰が怪力女だ…」
「な…なつきちゃぁ~ん…」
「ちづ!!遅いから心配したよ!!」
銀のブレザーの中から出てきたのは桜井さんだった
なんか…あの兎が出てくるマジック思い出した…
桜井さんはよろよろと久遠さんの方へ近づいて行った
銀はふぅっと一息ついて周りのやつに挨拶したり、挨拶されたりしながらこっちに来た
…き…きた…!!
どきどきと心臓がうるさくなり出した
思わずごくっと喉が鳴る
銀と目があった
「あ…ぎん、おは…」
「「「「「「ぎんくーん!!まってぇ~!!」」」」」」
「!!」
「!?」
なんだか急にうまく回らなくなってしまった口から出た裏返った声の久々の挨拶は何人もの黄色い声にかき消されてしまった
銀がギョッとしたような顔をしてクラスの奴らもなんだと教室の前のドアに視線をやった
「あ!!いた!!」
「ぎんくんまってよぅ」
「第二…いや、第三でもいいからボタン頂戴~」
するとそこにはいろんな学年のいろんな女子が集結していた
銀は『はぁ…』っとげんなりした顔で一つ大きなため息をつくと突然走り出して教室の後ろの扉から出て行こうとした
「…あっ……」
思わず声が出たけれどすでに銀は出て行ってしまっていた
………挨拶…しそびれちゃったな…
少し残念な気持ちになって気分が落ち気味になってしまう
でもそしたら突然銀が今さっき出て行ったはずの教室の後ろの扉からひょこっと顔をのぞかせた
俺も含め皆びっくりした顔をしている
そして銀は俺と視線を合わせると口をパクパクと動かした
「………!!」
「!!」
その意味に気付いてうんうんと首を縦に振る
すると銀は満足げに笑って女の子たちに追われながら走っていなくなってしまった
『待っとってな』
………銀はそう言った…
どうしよう…すげー嬉しい…
かぁっと熱くなる顔を押さえてできるだけ平常心を保とうとした
………待ってるよ……
心の中でそうつぶやいた
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