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驕り

ビックリして思わず声が出そうになってしまった 「え~卒業生の皆さんは心に翼をもって…」 ……うそ… 何度見直してみても銀の制服からは第二ボタンはなくなっていた うろたえた… もしかして…誰かにあげちゃったの?それとも逃げてるうちに落としちゃったとか…? 急に不安が強くなる 銀の顔を見つめてみたけれど銀はくあっと小さくあくびしているだけだった そして最悪な予感が頭をよぎった ……三か月と少し…俺と別れてみての銀の答えが『俺と今後も一緒でいたい』だとは限らないんだ… それを頭の中で思った途端ぞくりと寒気がした 銀は『待ってて』とは言ったけど 『好きだよ』とも『遠距離恋愛になったとしても付き合ってたい』とも言ってない… 突然今の考えがとても現実味のあるもののような気がした というか…俺が考えてた理想なんかよりよっぽど現実味がある… だってそうだ… 今までは男の俺と付き合って、銀はそんな俺を好きだって言ってくれて…初めは遊びだったのかもしれないけど本気で愛してくれた… でも、だからこそ盲目になって周りが見えてなかったのかもしれない… 俺と別れて、いろんな可愛くて性格も良い女の子たちに告白されたりしてそれで目が覚めた、なんてことの方が全然あり得る… 再度銀を見た 「……あふ…」 「………」 銀はまた軽く伸びをしてあくびしている 銀…… そしてそんな俺の思考に追い打ちをかけるように嫌な事を思いだした 『なんでも断るとき全員に『好きな人がいるから』って断ってんだって』 それはクラスの女子がこっそり話していた内容だった…… 『なんかさ…銀くんいるじゃん?最近メッチャ告白されてるっしょ?』 『あー…杉田と別れたからでしょ?良くわかんないけど』 『なんでも断るとき全員に『好きな人がいるから』って断ってんだって』 『は?だれそれ?杉田?』 『いや違うっしょ?何のために別れたのよ…』 『それもそっか?でもじゃあだれ?』 『さぁ?でも噂じゃさ!!あの二年の……』 なんだかめまいがした ひどく気分が悪い その話を聞いた時は不安に感じつつも心のどこかで『俺の事かな…』って思ってた だからきっと不安よりも安心してた… でも…… ゾッとした あれは俺じゃないのかもしれない… そしてそれと同時に自分が無意識のうちに驕ってた事がひどく恥ずかしかった 銀は何があったって俺を一番に考えてくれるんだって思ってしまっていた… 銀だって俺と同じ気持ちなんだと勝手にそう信じてしまってた… もう誰の話も耳に入らなかった ただ卒業式が早く終わってくれることを願った

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