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杉田学の憂鬱

こうして卒業式は無事に終わった でも俺は銀のない第二ボタンが気になってしょうがないままだった 「…えー…一年という短い間でしたが…」 「………」 今は教室に戻って先生が最後の挨拶をしている 銀もちゃんと後ろの席に座ってた さすがに配布物とかあるし今は追ってくる女子もいないらしい 銀の方を振り向いて聞きたいことがたくさんあった 「何年後かに立派になった君たちの姿が見れたらいいなと思います」 「………」 担任の挨拶もおわってぱちぱちとまばらに拍手が起きる 配布物も配り終えられてあとは挨拶をして下校の流れだった 心臓がどきどき言い始める よ…よし…こんどこそ銀に声かけて…ちゃんと話すんだ… きゅっと拳を握る 「きりーつ」 クラス委員のやつの声がかかってみんなが一斉に立つ 後ろで銀も立ち上がった気配がした 「きょうつけー」 「………」 心臓の音がどんどん大きく早くなる ギュッと握った拳にじわっと緊張の汗が滲んでいた 「ありがとうございましたー!!」 「「「「「「ありがとうございましたー」」」」」」 その挨拶と同時に教室にわっと声が溢れ一気に騒がしくなった パッと急いで振り返る 言うんだ…!! 「あのっ…!!」 「学…」 でも振り返るとバチッと銀と目があった 銀の手は俺の肩に伸び急に振り向いた俺に驚いてるみたいだった あっ…とお互い口の動きが止る さっきまで考えていた銀に言うコトが全部頭から吹っ飛んでしまった ………………たったその一瞬だった… 「「「「「「「「「ぎんくぅーん!!!!!!!!」」」」」」」」」 「!?」 また聞き覚えのある、今度はさらに規模の大きい地鳴りがしたと思ったら大量の女の子たちが教室になだれ込んで来て銀の取り囲んだ 俺はあっという間にその円の一番外側にはじき出されてしまった 「銀くん一緒に帰ろうよー?」 「銀くんカラオケは?これから行くんだけど卒業記念にさ~」 「それよりも銀くん、私銀くんの第二ボタン欲しいな~」 「ちょっと!!なにぬけがけしようとしてるのよ!!」 「そうよ!!やめなさいよ!!」 わいわいと銀に向かって言葉が投げかけられる あっけにとられポカーンとしてしまった でもすぐ次の女子の言葉でハッとする 「ねぇ~とりあえず外いこうよー」 「そうだよ~ここじゃなんだし?」 「さんせーい!」 そう言ってその銀を中心とする女子の一団は移動し始めた ハッとして顔を上げると銀はこっちを見て流れに逆らって進もうとし女の子たちに何か言ってたけど量に圧倒されてみるみる流されて行ってしまった 「ちょ!!ぎ…」 そう声をあげた時にはすでに銀は女の子たちに流されて教室を出て行ってしまっていた… う…うそ…… たらっと額を汗が伝う ど…どうしよう…

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