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ラスボス
「………」
「………」
女の子の波に銀が連れ去られて嵐の後の静けさって感じで教室はしんとしていた
う、うそだ…
あまりのことに開いた口がふさがらなくなる
傍にいた健斗も同じような顔をしていた…というかクラスの奴らのほとんどが面食らったような顔をしてた
伸ばした手がそのまま宙をさまよう
その時
「ださー」
「やっぱ嫌われてんじゃないの?」
「別れたのはホントみたいだしね」
聞き覚えのある声にぞくっと背中に悪寒が走った
健斗がハッとしたような顔をして俺を引っ張る
振り返るとそこにはあの俺に嫌がらせをしていた主犯の女子三人がいた
「な、何しに来たの?」
健斗が俺を庇って前に出てそう言ってくれる
でも猛ならまだしも健斗にそう言われて彼女たちもひるんだりはしなかった
「ホモ同士でかばい合い?きもー」
「アンタに用ないんだから引っ込んでなよ紺庄」
「…いいよ、健斗」
でも…っと食い下がろうとする健斗をたしなめる
健斗までとやかく言われる筋合いはない…それに今日が終わればもうしばらくは会うことだってない相手だ…
上手くやり過ごそう…
「………なに…?」
「なに?だって」
「なにってねぇ?別に?茶化しに来ただけだけど?」
「こっちはあれ以来頬付くんに目すら合わせてもらえないんだけど?」
「………」
それは自業自得だろ…
と言ってやりたくなったけど心の中にとどめた
事を荒立てたくないしこんな日にまた銀に迷惑かけたりしたくない…
「はぁ?なにその顔めっちゃむかつくんですけど」
「被害者ぶってさなんなの?銀くんにちょっと気に入られてたからって調子乗っちゃってるわけ?」
「………」
我慢だ…我慢…
ギュッと唇を噛む
気が済むまで文句言ってればいい…
でもそんな俺の態度が気に食わなかったらしい彼女たちの言葉はどんどん過激になって行った
「銀くんもさ悪趣味だよね、百歩譲って男と付き合うにしてもさ~」
「ね~もっといいのいたでしょって感じ」
「B専って奴なんじゃない?ほら可愛い子は手出しまくって飽きちゃったとかそう言うあれでしょ?」
「あー…ブスの方が経験ないから従順だししたいコトさせてくれるしみたいな?」
「えーでもこれはないわ~」
「ッ……」
思わず口を開きかけた
俺の事は良くてもその俺に巻き込まれて銀の事までひどく言われるのは我慢ならなかった
でも……
「お、おい…それは言いすぎ…だろ…」
「はぁ!?」
「何コイツ?」
それを俺が言う前に先に言ったやつがいた
「……藻府…」
「何?モブ?」
「そのまんまじゃん」
「なんとでもいえよ…」
けらけら笑う女子に向かってそう言ったのは藻府だった
女子三人を正面に向かえて立っている
興奮しているのか頬が赤かった
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