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モブキャラ
………たくさん迷惑をかけた…
「ださー」
「やっぱ嫌われてんじゃないの?」
「別れたのはホントみたいだしね」
クラス中が女子に連れ去られた頬付に唖然としていたら、そんなことを言いながら隣のクラスの女子三人組が入ってきた
頬付に相手にしてもらえない苛立ちを杉田に悪趣味な嫌がらせで還元していた女子たちだ
そうなってしまった責任の一端…というか全てが自分にある以上彼女たちが入ってきてドキッとした
「な、何しに来たの?」
紺庄が杉田を庇って心無い言葉をぶつけられ
杉田はそれを制して前に出ていた
………そんな杉田をまぶしく思った…
……自分のしでかしたことの重大さに気付いて杉田に謝りに行った日…
杉田はすぐにオレのことを許してくれた
許してくれたと言うか焦点の定まらない目をして気のない様子で『そう…わかった…』とだけ言われた
なんというか多分もうその時には関係が露呈した理由なんてものはどうでもよくて、その後起こってしまったことで頭がいっぱいいっぱいだったんだと思う…
そんな杉田の様子に余計に罪悪感を覚えた…
もっと怒鳴り散らしたり、怒ったり、殴ったりしてくれた方がいくらかよかった…
自分のしてしまったことの残酷さを改めて思い知った…
「………なに…?」
「なに?だって」
「なにってねぇ?別に?茶化しに来ただけだけど?」
「こっちはあれ以来頬付くんに目すら合わせてもらえないんだけど?」
「………」
杉田はただじーっと黙って理不尽な文句をぶつけられていた
杉田に罵られたり、殴られたりしても仕方ないと思った…
大した理由があったわけじゃない…ただ秘密を言いたくなったなんていう幼稚な理由で他人に漏らしていい内容じゃなかった
……でも杉田はその後もオレに文句を言いに来たり、陰で文句を言ったり…それこそ殴ったりなんてしてこなかった…
それどころか普通に挨拶して、普通に話しかけて、普通のクラスメイトと変わらず接してくれた
オレには『同性が好きだ』って気持ちはわからないけれど、あんなに女子からモテて、そしてきっと望めばもっと容姿のいい男からもモテる頬付が、オレに頭を下げ、杉田と付き合う理由がわかった気がした…
「はぁ?なにその顔めっちゃむかつくんですけど」
「被害者ぶってさなんなの?銀くんにちょっと気に入られてたからって調子乗っちゃってるわけ?」
「………」
どんなに心無い事を言われても杉田はじっと耐えていた
杉田はそんなこと言われる筋合いなんてないのに…
「銀くんもさ悪趣味だよね、百歩譲って男と付き合うにしてもさ~」
「ね~もっといいのいたでしょって感じ」
「B専って奴なんじゃない?ほら可愛い子は手出しまくって飽きちゃったとかそう言うあれでしょ?」
「あー…ブスの方が経験ないから従順だししたいことさせてくれるしみたいな?」
「えーでもこれはないわ~」
「ッ……」
そしてとうとう彼女たちのやつあたりは頬付にまで至った
杉田はそれを聞きながら悲しそうな悔しそうな顔をして歯を食いしばっていたけれど最後に口を開きかけた
………いいのか…これで…?
突然すっと頭が冷えた
杉田が許してくれるからってそれに甘えて傍観者決め込んで…また罪悪感で嫌な思いをするのか…?
頭と反対にかっと顔が熱くなった
ぎゅっと拳を握る
少し離れたところで久遠さんがそんなオレを見ていた
『最低』といわれた時のことを思い出す
ダメだ…!!
そして気づいたら前に出て口を開いていた
「お、おい…それは言いすぎ…だろ…」
「はぁ!?」
「何コイツ?」
女子たちが面食らったような顔をしてる
杉田は驚いた顔で俺を見ていた
このままじゃだめだ…杉田が許してくれるからって…それに甘んじて……じゃあ、いいのかななんて思って…
オレがオレを許したりしたらダメだ…!!
この時いつにもなく興奮し頭だけがさえていた
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