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二人の居場所

まなが教室から飛び出した少し前… オレはちょうど教室から女子に押し出されたとこやった 「ねぇ~とりあえず外いこうよー」 「そうだよ~ここじゃなんだし?」 「さんせーい!」 ぐいぐいと女子の一団に教室から押し出される 後ろでまなが口を開いたのが見えたけれどその声は聞こえなかった 「ちょ…待ってえや!!」 「えー?銀くんはやくいこ?カフェでいいかな?あ、それともカラオケとかのがいーい?」 チッと心の中で舌打ちする オレはまなと話さんといけんのに… でも全身に絡みつく女子を思いっきり振り払ってって事もできん… いや…別にしてもええんやけど……まな怒りそうやし… なんとかこの状況を打破しようと周りを見回した またちづちゃんかあの怪力女あたりがいないかと思ったけどそう都合のいいことが何度もあるわけでもなく気付けばあっという間に一階の玄関近くまで押し流されとった くっそ…外に出たら余計戻ってくるのが難しくなる… ぎりっと歯ぎしりする しかたない…ちょっと不自然やし時間はあまり稼げんやろうけど…今はこの場から逃げる方が先や… 「……なぁ…」 「ん?なぁに?銀くん?」 とりあえず近くにいた少し権力のありそうな女に声をかけた その女に顔を寄せて困った顔をしてみせる そいつはあからさまに頬を赤らめていた 「あんなぁ、オレトイレ行きたいんやけど…先行っとってくれへん?」 「え?」 「…こんな大勢の前でトイレ行きたいなんて…オレ恥ずかしいわぁ……何とかしてくれへん?」 ぱちっと片目をつぶってそいつに頼む するとそいつは赤い顔のままぶんぶんと激しく首を縦に振った チョロ… 「ね、ねぇみんな!!ぎ、銀くん教室に忘れ物しちゃったらしくって…それでさ、先行っとかない?」 「え…でも銀くん忘れ物なんて…」 「銀くんがしたって言ってるの!!」 「じゃあ私たちも戻って…」 「バカ、察しなさいって!!」 そいつはこそこそと周りのやつに何か耳打ちしてる まぁ別に何と言ってくれたって一人になれればかまへんのやけどな… そしてしばらくするとさっきオレが声をかけたやつの周りにいた数人がお互いに顔を見合わせうんうんとうなずいて口を開いた 「あ…じゃあ、私たち玄関のとこで待ってるね~」 「ほら!!みんないこ!!」 「後でね~銀くん!!」 「………」 にこにこ笑って愛想よく手を振る こうしてオレは一人になれた でもうかうかしてられないここからが大事や… ちゃんと女子たちの数名がこちらを気にしてみているのを確認して玄関の位置から見えるトイレに入る これで遅いと思われてもみとったやつがいるし、しばらくはオレはこのトイレにいることになるから大丈夫やろう… 男子トイレやからうかつに中を確認することもできない… でも問題はその後や…あまりに遅いと捜索が始まる…せやからそれまでに何とかええ位置に隠れとかんと… そう思って必死に頭を回した こんな真剣に考えたの受験以来かも知らん… 見つかりづらくて…それでいてまながわかってくれる場所や… 考えた結果候補が二つ残った どちらもオレとまなにとって大事な場所やった

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