966 / 1015

もう待たない

銀…銀…!! 「…っはぁ…はぁ…」 ずっと我慢してた…閉じ込めてきたものがあふれ出して銀に会いたくて思わず走り出した 目から滲んだ涙で視界が歪んでいた 銀は絶対に待っててくれてる…!! 待っててって呟いた銀の顔を思いだした 銀…もう俺待たないから……待ってて銀…今度はオレが…俺から行くから… でもやみくもに走ったところで銀が見つかるわけもなく…そのうち息が切れて膝に手を着いた はぁはぁと肩で息を吸い込む 銀が見つからなくて急に心細くなった 銀…どこ…? 苦しいのと切ないのとできゅっと胸が痛んむ でもその時俺のすぐ横を女の数名がぱたぱたと小走りで通り過ぎて行った たしか…銀を取り囲んでた一団にいた子だ… ……? 何か大きな声で話している 「あ~ん、もう銀くんどこ行っちゃったの~?」 「結局トイレにもいなかったんでしょ?」 「今日こそ一緒にカラオケ行けると思ったのにぃ~!!」 「逃げられたぁ~」 「まだ学校の中にいるって」 「そうそう、探そ探そ!!」 そう言って女の子たちは軽い足音を立てて通り過ぎて行った 銀…逃げれたんだ… 体にだんだん力が戻ってくる 銀はやっぱり待っていてくれているんだと確信が持てた 胸の内がじんわりと暖かい でも…じゃあ…どこにいるんだろう… 一度足を止めて深呼吸してから考える きっと教室なんかに来たらまた騒ぎになって女の子に囲まれちゃうだろうし隠れてるんだ… それなら簡単だ、銀にメールしてどこにいるか聞けばいい そう思ってポケットに手を突っ込んだ 「………あ…」 そこでやっと自分が飛び出してきて荷物をすべて教室に置いてきていることに気付いた スマホも鞄の中だ… くっそ…こんな時に… でも教室に帰るのも億劫だった まだあの女子三人組がいるかもしれない… 銀が…隠れてる場所… でも改めてそう考えてみるとそんなに難しいことじゃないように思えた 俺には銀がいる場所…わかる… きゅっと唇を噛んでその場で踵を返した 二か所で迷ったけど…多分銀ならあっちだ………何となくだけど… 「…よし…」 ぱんっと膝を叩いて再度走り出した

ともだちにシェアしよう!