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ナイショはなし

「まな、ええ?ナイショはなし、あとからちゃんと話そ思うとったんやけどな?これからオレらこんな風にすぐすぐ会ったりできなくなるんやで?」 「…う…」 銀が俺の顔を覗き込んでそう言う う…顔…近い… それと同時になんだかずっとわかってたはずの現実を再度銀につきつけられてまた泣きたくなった きっと数か月ぶりに銀に抱かれて感覚がバカになってたんだ… 銀と一緒にいられないなんて…忘れるわけないのに嬉しくて…幸せで…また今までみたいに一緒にいられるような錯覚に陥ってたんだ… そんな事……俺が一番わかってるよ… じわっと涙が滲む 「………まな…」 銀が心配そうにこっちを見つめる さっき俺が泣いてしまったのは昔を思い出したからだった 銀と出会ったばっかりの…おもちゃになれって言われた日… あの日から銀との関係は始まったんだ… もうすぐ銀と出会って二年になる… 銀がぺろっと俺の目元を舐めて涙を掬った 「ははっ…しょっぱ…」 銀はそう言うと銀は満足そうに笑った こうして見ると銀は二年前とあまり変わらないように見えた でも髪は少し伸びたかもしれない…多分少しだけ身長も伸びたんじゃないか? でも俺と銀の目線の高さの差はそんなに変わらないように見えた… ……俺も男だから銀と同じ速度で大きくなる…すでに小柄でかわいらしいって言うタイプではないけれどきっと…そのうちもっとかわいくなくなってくる… そう思うときゅっと胸が痛かった ………まだ背が伸びるかもしれない、声だって低くなるかもしれない、もっと筋肉が着くかもしれないし、体中が筋張って硬い体になって行くかもしれない………そしてそのうち…もっとずっと先になれば…髪が白くなって、背中は曲がりおじいちゃんになる… 苦しかった 俺は銀と出会ってからの二年間の内…すごくたくさんの時間を無駄にしてしまった気がする… 始めの男と付き合うなんて考えられなくて銀を拒絶してた時間、銀が好きだと言ってくれなくてうじうじしてた時間、素直に気持ちを伝えることができずにふいにした時間… その時間をもっと銀と過ごす時間にしたらよかったのかもしれないと今になって後悔した 始めから銀に好きだと、愛してると伝えて、二人でもっとたくさんの事をしたらよかった… 次会った時、俺が変わってしまっていたら…銀は冷めてしまうかもしれない… 今までは毎日会っていたから変化に気付いていなくても今後はそうはいかないんだ… 銀が遠くに行ってしまうことが今初めて、本当にちゃんとわかった気がした 「………まーな…」 「………」 銀がこつんとオレの額に自分の額を当てる 不安で押しつぶされそうなオレの顔を銀が撫で、また腕を腰に回した 小さな、かすれるような声で『言って…』っと繰り返す そう言われるとなんだかまた胸の奥がきゅうっとなった そっと口を開く これも俺が変わったことのうちの一つだ…昔はこんなに素直じゃなかった 「………さみし…かった…」 「…うん?」 「………ほんと…は…行って欲しく…ない…の……」 「………」 ぎゅーっと銀の着ている服をより強くつかみ顔を押し付ける 恥ずかしくて銀の顔は見れなかった

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