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お世話になった人
「あっ、あああ、あのっ…ぴ、ぴんくの…あ、えと…ピンクの人じゃなくて…ちがくて…」
「……頬付…」
「そ、そうっ!!ほ…ほ、頬付、君…にい、いっぱいお世話になった…から…」
ちづちゃんがあわわわわって音が聞こえそうなぐらい慌てながらそう言った
ちづちゃんからかい甲斐があってかわええわ~
むしろこちらこそなんだかんだ言ってちづちゃんにはお世話になった
「………」
するとちづちゃんとオレのやりとりを斜め後ろから見ていたまなが突然オレの手から自分の手を引き抜こうとした
………
その手をギュッと握って引き留める
まなはビクッとこっちにまでわかるぐらい体を震わせてそれから何度かオレの手から自分の手を抜こうとしていたが少しして諦めた
………どうせまたしょうもない事考えとるんやろうなぁ……まなにとってはしょうもなくないんか…
チラッとまなに視線を向けるとまなは頬を赤らめ困ったようなばつの悪そうな顔でこっちを見ていた
ちづちゃんがいようが誰がいようがまなの恋人はオレでオレの恋人はまなや…
「あ…そ、そうだ…え、えと…あの…ぴ、ぴんくの…じゃなくて…ほ、頬付くん…そ、その…こ、これ…」
すると今度はちづちゃんがオレらの手に気付いてか気付かずかオレに紙袋を渡してきた
中をのぞいてみるとそこにはかわいらしくラッピングされたおいしそうなカップケーキが入っとった
「こ、これ…その…お、お礼…っていうか…その、ほ、ほんと、いっぱい…た、たすけてもらって……あっ…その…わ、私の手作り…とかイヤかもしれない…けど……い、嫌……いや、だよね……」
「…いや、ちづ別にだれも嫌だなんて……」
「ご、ごめんなさい…」
「ち、ちづ…?」
ちづちゃんが自分の発言で自らへこんでくのを見るのはかわいそうかもやけど少しだけ面白かった
他の女やったらともかくちづちゃんの手作りが嫌なんてことはない
いくら恋敵でもちづちゃんに変なもんを混入させる度胸があるとは思えない…
「嬉しいで?ありがとうちづちゃん」
「ほ、ほんとう!?」
「ほんまほんま」
「あ、ぅ…あ、ありがとうごじゃ…!!痛い!!」
「ふふっ」
ちづちゃんは勢い良く頭を下げて舌を噛んだ
怪力女にも『も~』と呆れられてる
そして今度は怪力女の方と目があった
「……まぁ、その…いろいろ申し訳なかったよ…杉田とのこととか…隠してたんだろうに私たち、余計な茶々いれちゃってさ……杉田もごめんね」
「そ、そんな…」
突然話を振られて驚いたまながぶんぶんと首を横に振る
まなは相変わらず女子に免疫がないみたいでしどろもどろになっとった
「……ほら、あんたもいろいろ言いたいことあって来たんでしょ?昨日まで散々いじいじしてたくせにさ」
「…い、言わないでよ、久遠さん……」
そう言って怪力女の後ろから女みたいにもじもじしとる
藻府が出てきた
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