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言葉の重り

「とにかく!!元気で頑張ってほしいッス!!あ、あと観光行ったら泊めてください!!」 若葉ちゃんは一通り銀に挨拶を済ませぺかぺかした笑顔で銀と半ば無理やり握手した 若葉ちゃんが銀の元を離れる 銀には今度健斗が近寄って何か話を始めた その様子を見てもう何度目になるかわからない銀が遠くへ行ってしまうんだなって言う実感を抱いた すぐ隣で、銀と手を繋いだまま話を聞いてるはずなのに音が遠くに聞こえて健斗が話している内容が頭に入ってこなかった 銀が遠くに… 胸の奥の辺りがつきんと鈍く痛んだ 「……学さん学さん?」 「……?…若葉ちゃん?」 ボーっと銀が健斗と話している様子を遠い所から眺めている気分になっていたら突然銀に挨拶を済ませた若葉ちゃんが俺の服の裾を引いた 首をかしげると若葉ちゃんはチラッと銀を見上げた 「その…ちょっといいッスか…?」 「…?」 どうやらここでは話しにくいらしい 仕方なく銀に声をかけて少しその場から少し離れる ずっと銀とつないだままだった手がなんだかスースーした 若葉ちゃんがその手を見て申し訳なさそうな顔をする 「……すいません…その…」 「あ、いや別に大丈夫……それで?」 若葉ちゃんは俺が話の先を促すと急に真面目な顔になって俺を見つめてきた じーっと若葉ちゃんのまんまるで大きな目に見つめられる 「……大丈夫ッスか?…」 「……え…?」 「…学さん…寂しいスか…?」 「………」 若葉ちゃんはこういう時なんだか別人みたいに大人びた顔をするようになった じーっと俺を見つめたまま俺が何か答えるのを待っている 寂しい…かどうか…… 「……そ、れは…寂しい…よ…」 「…じゃあもっと、その…おせっかいッスけど…兄貴に寂しいって言った方がいいッス」 「……でも…俺銀にできるだけ心配かけたくない…から…」 一瞬答えに詰まってしまった でももう銀の前で寂しいって言ったり泣いたりしないって決めたんだ… 銀は俺のためにもって思って向こうで頑張ろうとしてくれてるのに俺がそれを阻むような事言うなんて…… 「兄貴、きっと心配するッス、学さんが寂しいって言っても言わなくても…きっとそうッスよ…それに…」 「………?」 「その…あとからやっぱり寂しいって言いづらくなるッス…」 「………」 ハッとして若葉ちゃんの方を見ると若葉ちゃんは耳にぶら下がる見覚えのあるピアスをいじりながらしゅんとしてそう言った きっと若葉ちゃん本人の事を言っているんだろうと直感した 「その…それに…学さんに『言った方がいい』って伝えてってノア先輩にも言われました…」 「………」 「『好きなコに甘えられて嫌なBoysなんていないんだから♥』って言えって言われました……」 若葉ちゃんは相変わらず少ししょげたままだったが志波のマネが思った以上に上手で笑ってしまった 眉毛を下げたまま俺が笑っているのを見てにーっと笑う なんだかこっちも少しだけ明るい気分になる笑顔だった でもきっと…そんな若葉ちゃんも志波に寂しいって言えなくて辛い思いをしてるんだなと思った 後で志波に『若葉ちゃんが寂しがってるよ』ってメールしておいてあげよう…返信がいろいろうるさいかもしれないけど…多分なんだかんだ言って志波も喜ぶような気がする… 「だ、だからきっと…兄貴も喜ぶはずッス…」 「………そっか…」 「ウス」 『じゃ、じゃあ…』と言って若葉ちゃんは立ち上がった 皆の輪から離れたところに一人残されそこから皆を眺める 銀は俺が『寂しい』って言ったら困らないだろうか… 『いつでも会いに行くし会いに来て』って言ってたけどそんな銀の優しさにばっかり甘えてていいわけじゃない…それにそんなにすぐすぐ会えるような距離でもない… 大学に入ったら銀は課題とかで忙しくなるだろうしそんな邪魔はしたくない… ……… ……俺の『寂しい』は…銀の重りになってしまわないだろうか…

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