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いってらっしゃい

「まーなっ?ほら、最後。まなの番やで、おいで?」 「………」 銀が少し離れたところで待っていた俺を手を広げて読んだ 最後なんて言うなばか… 涙が滲みそうになった 銀が広げた腕を上下に揺すっておいでおいでと俺を呼んだ いつもなら絶対行ったりしない… 桜井さんや藻府だっているし…銀が調子乗るだけだし…そもそもこんな公共の場で… 「………」 でも今日は最後だし…泣きそうだし…ここが公共の場だとか桜井さんたちがいるとかそう言うことが全部頭からすっぽ抜けてしまって銀に飛びついた 『わっ!!』て驚いたような銀の声がして、銀の肩辺りにぶつけた鼻が痛かった でも銀の匂いがしてじぃんっと泣きたくなる 銀は自分から呼んだくせに俺が来たことに驚いたようだった 銀自身もまさかこんなとこで俺がこんなことすると思ってなかったらしい 「……あー…二年間…あっという間やったなぁ…」 「………」 他人事みたいにそんな事言って銀はからから笑った また俺の心配ばっかりして、オレが帰ってきたら~…なんて話をした そして最後に… 「大丈夫、4年なんてきっとあっという間やから………そんでその4年が終わったら………ずっと一緒にいよ?」 「!!」 真剣な声でこんなことを言った 目が熱くなってぶわっと涙があふれてきた ぎゅうっと銀にしがみ付く、銀も俺の事を強く抱きしめた ………4年はあっという間なんかじゃない…きっとその間に何度も苦しくなって嫌な思いだってするかもしれない…… でもきっと銀だってそんなことぐらいわかってる… だから良いと思った さっき若葉ちゃんが言ってた事を思いだす 今ならそれを銀につたえた方がいいと言った若葉ちゃんの気持ちがわかるような気がした 自分の寂しい気持ちを4年も閉じ込めたままにはしとけない… その気持ちがいつかどうしようもなくなって、それで銀も俺も悲しい思いをするぐらいなら… 「……銀…」 「…ん?」 「あの、ね…あのね…」 「……うん…」 銀は黙って俺が続きを言うのを待っていてくれた 上手く伝えられるなかったけれど口を開く 「……寂しい…」 「………」 「銀…が、いなくなって…一人になるの、心細いし寂しい…」 「……うん…」 「ほん、と…は、行って欲しくないの…」 「うん…」 「……それ、だけ…」 「………」 別に寂しいから、行ってほしくないから今からでもここに残ってほしいってわけじゃない… もちろん一緒にいてくれればうれしいけれどでもそれができないことはわかってるし俺達のためだって知ってる… ただ銀に俺がそう思ってることを知ってほしかった 銀もきっとそれを理解してくれたんだと思う 銀は頷きながら返事をしてくれた それだけでじわじわと胸が暖かくなった きっと今ならあの日上手に言えなかった言葉を上手に伝えられる気がした 銀から体を離して、銀の顔を見上げて笑う… 銀がハッと息を飲むのがわかった 「元気でね銀、いってらっしゃい」 「ッ!!」 泣きそうだったけれど泣かなかった 今回は俺の代わりに銀が辛そうな顔をしていた

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