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最後のキス
銀にキスされた
「……ッ」
「…っふ…ッ…」
銀はずっと俺に唇を押し付けていた
きゅっと目をつむってそれに応える
「え~あれ男…?」
「男同士?」
「テレビとかじゃね?」
「え、本物?ゲイってやつ?」
ざわざわと周りの人の声が耳に入って顔から火が出そうなぐらい恥ずかしかった
桜井さんたちだって見てるしここは空港だ…ちゃんとわかってる…
でも銀が顔を寄せてきた時
驚きはしたけれど嫌だとは思わなかった
今だってそうだ
恥ずかしいけれど嫌だとは思っていない
「………」
「……ッ、う…」
銀は真剣な顔をしていた
俺に気を使ってか、俺の着ていたパーカーのフードを押さえて周りから俺の顔を隠してくれている
銀の唇は柔らかく暖かく優しかった
そして銀はやっと唇を離した…
じっと俺を見つめている、俺も銀を見つめ返した
「ちょっと!!写真なんて撮らないでよ!!見世物じゃないんだからっ!!」
健斗が怒ってる声が聞こえる
あぁ…やっぱり写真とか撮られてるんだな…
SNSに写真を上げられたりしたら俺が行く大学の人とかもみるかも…
けれど後悔はしていなかった
健斗が野次馬と言い合う声が何だか遠くに聞こえた
あとで健斗にお礼しないと…
そんな風に思いながらも銀の目を見ていた
銀の瞳が揺れているようだった
俺が行かないでって言っても絶対行くんじゃなかったのかよ…
そっと銀の頬に触れる
「その…大丈夫だよ…きっと寂しくなる、し…不安にもなるし…銀にも迷惑かけるかも、しれないけど……辛くなったらちゃんと銀に言うよ…」
「……うん…」
銀は泣きそうな顔でそう言って再度俺を抱き締めた
俺の首に顔を埋めている
俺も銀の背に腕をまわして抱き締めかえした
「………」
「………」
人目もはばからず俺と銀はしばらくそうしていた
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