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帰路
その後も散々だった
銀の腕から解放された俺は半ば無理やり連絡先を交換させられた
どっちにしろ俺に拒否権なんてないし…
「泊まってってもええのに~」
「泊まらない!!」
「え~…ほな、送ってくわ」
でオレは今銀と二人で駅に向かっている
ちなみに銀の家は俺の最寄駅から5駅だった、学校までは4駅
俺の家(間3駅)学校(間1駅)銀の家って図式
服は(って言っても下着だけど)銀が洗濯してくれたらしく綺麗になって戻ってきた
しわにならないように干しといてくれた制服を着て歩く
それにしても銀はホントにイケメンらしい
わかってはいたけどすれ違う人が振り向くほどだ
…俺だってきっといいほう…なはず…だけどこいつと並んで歩くと少し自信無くす…
そんなことを並んでいる影の足の長さと身長の差を見て思った
「どしたん?まだ体辛い?」
若干うつむくように歩いていたオレの顔を覗き込んで銀が言う
「…………別に…」
恥ずかしくなって顔を逸らしてしまう
でも銀はそんなこと気にした様子もなく「そう」と楽しそうに言っただけだった
銀の家から歩いて10分ほどで駅に着いた
改札まででいいと言ったのに銀はホームにまでついてきた
帰る途中に聞いた話によると
銀の親はどうやら海外にいるらしい
前の学校にいたときも一人暮らしだったとか…
家の立地がそれなりよくてキレイでそんな所に子供を一人暮らしさせれるということはきっと銀の家は裕福なんだろう
でも…寂しくないんだろうか…
俺の家も似たようなものだけど月1で帰ってきてくれるし
この年になってもまだ授業参観や文化祭の行事も必ずくる
「まぁ…新しいおもちゃも手には入ったし、寂しくはないかな?」
俺の思ってた事を見透かしたように銀がニヤッと笑いながら言う
オレはどうやら銀のこの笑い方に弱いらしく背筋がゾワッとする
「……おもちゃなんて、誰がやるか…」
せめてもの抵抗と小さな声で言ったつもりだったが銀は聞いていたらしい
「…ふ~ん、そう…別にオレはそれでもええんよ?」
銀がスマホで何かの動画を流し始めた音がする
「……ッ!?!?ッバ、おまっ、こんなところで、だ、誰かに見られたらどうすんだよ!!!」
顔を真っ赤にして大慌てで銀の手からスマホを奪って画面を見ると初めからデータに入っているただのテスト動画だった
隣で銀がクックッと笑っている声が聞こえ、からかわれたんだと気づいて脱力する
くっそ…腹立つ…
「ホンマまなかわええ」
「まなって呼ぶな…かわいいとか言うな」
頭を撫でてくる銀の手を振り払ってむすっと言う
俺が待ってた電車が来ると言うアナウンスが入る
「で、やらない?やる?」
「……………やる…」
「や「る」?」
「……………やります……」
わざわざ言わせるとか本当に悪趣味だ…
電車がホームに入ってくる
「ほな、月曜日な」
そう言って銀は座っていたベンチから立ち上がる
「あ、せや、まな」
「…だ~か~ら!!まなって呼ぶのやめ………!?」
伏せていた顔を上げて言い返そうとした瞬間唇をふさがれた
何が起きたかわかんない、銀の顔がすごく近くにある
「じゃあな」
銀は唇を離すとそのまま手を振って行ってしまった
「………………~~~~~~ッ!!」
何をされたか気づいてカーッと顔が熱くなる心臓の音もでかくなる
だれか見てたらどうすんだよ…!!!
恥ずかしくて顔が上がらない
電車がそのまま発車する
くっそ…マジで、覚えてろよあいつ…
オレはそのままベンチに座って次の電車が来るのを待った
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