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健斗くんの話 健斗と不良
「ってぇ…なんだよ!!!クッソ…なんでこんなところに人が…」
人に見つかって好奇の目で見られるのを嫌がっていつも昼飯はここで食ってた
今日もそのつもりでココにきた
ついさっきつぶした奴が追いかけてきてたから後ろを確認しながら進んでいたら何かに引っ掛かってこけた
起き上がってみると2年のネクタイを付けた先輩だった、ネクタイがなかったら中学生と思うぐらい小柄で童顔だった
ポカーンとこっちを見ている
「…ッう…」
「ああ?」
「…っうぇ、おれのべんとう~」
「…!?」
その先輩がいきなり顔をぐしゃっとゆがめオレの尻のあたりをみてぽろぽろ涙を流し始めた
…え、え~…ほんとに2年かよ…つか高校生かよ…
そいつの視線をおってあわてて自分の尻の下を見るとぐしゃっと潰れた弁当があった
中身がひっくり返ってぶちまけられてしまってる
「っぐず…お~れ~のべんとう~」
その先輩がオレの尻の下の弁当を見ながら泣き続ける
正直焦った
「…あの…」
「お前!!なにすんだよ!!!」
声をかけたらいきなりこっちをキッとにらんで怒り始めた
「どうしてくれんだよ!!今日午後体育あんだぞ!!」
…体育って…
「これでもし負けたらお前のせいだからな!!わーん」
…何にだよ
でもこの人の弁当を潰したのはオレだ…確実に俺が悪い…
「あの…」
「なんだよ!!」
「オレの弁当…食います?」
「いいの!!」
ぱぁっと顔が輝く…
この人忙しい人だな…
「潰しちゃったのオレなんで…」
「ホントに?ほんとにいいの!?」
でそのままなぜかこの人と昼飯を食べることになった
オレの弁当箱を開けて目をキラキラさせている
ほんと子供みたいだな…
「あ、きみ名前は?」
「…吉田っす…」
「下は?」
「猛」
「おれはね紺庄健斗!!よろしく!!」
ニコニコ笑って先輩が言う
すぐに視線は弁当箱に戻して箸を掴む
この人オレの事怖がらないんだな…ていうかしらないのか…
「いただきまーす!!」
「……………」
そのままオレは先輩が飯を食うのを観察していた
ニコニコしておいしそうに頬張っている
「………」
「ねぇ!!これ誰が作ったの」
「え、や…オレ、ですけど…」
「自分で作ったの!?」
「……そうッスけど…」
「すごい美味しい!!おれのいつも食ってる弁当よりうまいよ!!」
先輩がこっちをみて目をキラキラさせたまま言う
…なんかこの人やりにくいな…
オレの家は兄弟が多いしそんなに裕福な家なわけでもない
だからできるだけ切り詰めて生活しないとやっていけない、来年には妹も高校に上がって余計金もかかるオヤジとおふくろは共働きだから家の事は出来るだけ長男のオレがやらないと…
先輩はおいしいね~と呟きながらオレの弁当を食い続けてる
「あ、猛もお腹すくよね?はい」
「…いや、別にオレは…んぐ…」
「オレはいい」と言おうとしたときに先輩が唐揚げを口に突っ込んできた
しかも一個まるまま…
「これが一番おいしいよ!!」
「………」
この唐揚げはちょっと自信があったから嬉しかった
学校じゃ基本避けられるかケンカを吹っかけられるかだしほとんど褒められたことがなかったからからなんかむずがゆかった
…変なひと…
それが紺庄先輩の第一印象だった
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