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健斗くんの話 先輩の弁当

「あ、たける~!!」 「はいはい…」 その後もオレは校舎裏で紺庄先輩と昼飯を食ってる というかこの人がいつも来る… どうやら先輩は幼馴染の恋愛を後押しするために邪魔な自分はよそで飯を食って二人きりにさせようと思っているらしかった 「学はね~昔から素直じゃないから銀の事が好きなのに好きじゃないと思い込もうとしてるんだよね~」 「…はぁ……」 先輩はよく喋った それを聞くのがオレの役だった 銀って言うのは多分2年の頬付銀っていう人だと思う あまり授業に出ず、教室に行かず、ほとんど学校で他人としゃべらないオレすら知ってるくらい有名な人だった 最近転校してきた人で女子がかっこよくて優しくて頭もいいと大絶賛していた 何度か見たこともあるけど確かにスタイルも顔もよかったけどなんかゾクッとするような冷たさがあってオレはちょっと苦手な雰囲気だった たまに校内でサボってるのを見たこともあった でその頬付先輩に片思いしてる?ていうかセフレ?の学さん?が頬付先輩も認めるの恋人になれるよう後押しをしたいらしい …………頬付先輩もあれだけかっこよければセフレの一人や二人いるんだろうな~ 誰かと付き合ってるって話は聞かなかったから多分隠すのが上手いんだろう でもあの頬付先輩のセフレの子って…やっぱり美人なんだろうな~ そんな事を考えながら先輩の話をいつも聞いていた 「……あ、猛今日のお弁当エビフライ入ってるんだね…」 「………いります?」 「いいのっ!?」 …だっていまのそう言うくだりじゃないっすか… 先輩の弁当箱にエビフライを運ぼうと箸で掴む 「あ~ん」 「…っい!?」 先輩が顔を突き出して口を開けている 思わず驚いて動きを止めてしまう 「はやく、ちょーだい?」 「う、あ、はい…」 そのまま先輩の口にエビフライを入れる 友達と呼べる人間がいないからよくわからない…けど…これは普通なのか…? 先輩はおいしいおいしいとにこにこしている まだ混乱している自分を落ちつける ほんとに調子狂う… 「…先輩の弁当は誰が作ってんスか?」 変に焦る自分を隠すように先輩に質問する 実はこれはちょっと前から気になっていた 弁当の色合いや入ってるものの感じから男の先輩や先輩の親年代の人が作る弁当とは思えなかった 「ん?あーこれね、お弁当係の子が作ってくれるの」 「お弁当係?」 話を聞いたらいろいろな事情から先輩は先輩の弁当を作りたいと言う融資の女子総勢60名近くから日替わりで弁当を貰ってるらしい ……先輩モテるんだ…まぁ確かに世話を焼きたくなるのはわからなくない… 「でも猛の弁当の方がおいしいよ」 「…!?そ…っすか」 先輩がふにゃっと笑ってこっちを見る まただ…なんだか先輩といるとむずがゆくなる 「…………なら…明日から先輩の分もオレ弁当作りますよ…毎日…」 なんでこんなこと言ったかわからなかった でも気づいたら口から出ていた 「ほんと?」 「………はい…」 「やったぁ!!」 こうしてオレは先輩の弁当を毎日作ることになった 一人分ぐらい作る弁当が増えたところで問題はなかった

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