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健斗くんの話 噂の頬付先輩
「……あ…」
「…お前、健斗の知り合いなん?」
横になって考え事をしていたらいきなり声が降ってきてた
声の方を見ると見覚えのある男が立っていた
……頬付先輩だ…
あまりにタイムリーな相手すぎて焦る
「……なぁ?聞いとる?」
「…え、あ、はい…」
「で、知り合いなん?」
「……まぁ…はい…」
「…ふーん…」
そのまま頬付先輩はオレの隣に座った
…なぜ!?
気まずくなって立ち去ろうと思って立ち上がる
「待ってや、せっかくなんやしお話しよや、別に授業とか気にせんのんやろ」
「……………」
何となく断れなくて座りなおす
……でもほんとにカッコいいんだな…すっとした高い鼻になっがいまつ毛に囲まれたシャープな目、肌も真っ白だし唇の形も整ってて眉毛まで綺麗だった…あんまり容姿を気にしないオレでもこの人はイケメンなんだなって良くわかる
なんて言うかフェロモンが出てる……めっちゃ出てる…
そうあの、道を歩けば雌猫が失神するとかそう言うレベルだと思う…
隣に座ってて惨めになるくらい足長いし…
女子がきゃーきゃー言うのもわかる…とても…すごく…
「…なに?」
「あ、なんでもないッス…」
思わずじーっと見入ってしまっていた
あわてて目を逸らす
声まで色気たっぷりに聞こえる…
頬付先輩は話そうと言ったわりに何も喋らなかった
オレの隣に座ったままボーっと空を見てる
オレ的にはすごく気まずいんですけど…
でも去ろうにも去れない…なんか怖い…
きっとオレはこの人のこういう雰囲気が苦手なんだと思う
なんて言うか逃げられない感じ?威圧感?
だんだん焦ってきた、こういう時どうするのが良いんだろう…
「…あ、の…先輩は…彼女、さんと、か…いないんスか…」
何聞いてんだオレ…テンパりすぎて変な事を聞いてしまった……アホか…
「ん~?おらんで?」
「…そ、ッスか…」
先輩は口だけ動かして答えた
やっぱりいないんだ…
「ん~まぁ気に入っとるやつはおるかも」
「………だれッスか?」
「…フフッ、ナイショ」
……ナイショってなんだよ…
もしかして学さん…?とか思った…
ていうかオレって先輩からしたら超変な奴じゃね?いきなり会って初対面でこんな話しするとか…
気づいたら恥ずかしくなってきた…穴があったら入りたい…
「お前は?えっと…」
「吉田です」
「下は?」
「猛っす…」
「猛は?どうなん?かっこええしモテるやろ?」
かっこいい?オレが?
イマイチわからなかった…
「かっこいい…ッスか…?」
「うん、身長も高いし、スタイルもええし、顔もかっこええやろ」
「…で、もオレイマイチそういうのわかんないんで……」
ていうか頬付先輩にそれ褒められても素直に喜べない…
最近つくづく自分が何も知らない人間だと思い知らされる
小学生や幼稚園の時に女子に好きと言われたことはあるし妹がお兄ちゃんのお嫁さんになりたいと言ってくれたこともあった
確かに多少の嬉しさはあったけどそれは違うだろ…
中学高校でのそう言う関連なんて道端で軽そうな女に声をかけられたぐらいだ
まともに友達すらいないオレがまともに恋愛しているわけがない
「そういう経験ないの?」
「………ありません」
「相手のこと可愛いな~って思ったり変にドキドキしたりむず痒い気持ちになったり喜んでほしいな~とか…ないん?」
紺庄先輩の顔が浮かぶ
カーッと顔が熱くなる
……………なわけあるか…紺庄先輩は男だ
恋愛って言うのは男女ですることだ
「……いるんや?」
「……いません」
違う、紺庄先輩は違う
先輩を可愛いと思ったり、上目づかいにドキドキしたり、褒められてむず痒くなったり…しない…
でも…そう言えばさっき頬付先輩にカッコいいって言われてもむず痒くなったりはしなかった……
また顔が熱い
「…先輩だって…そういうのないんスか…」
これ以上質問されるのが怖くて聞き返す
「ん~かわええな~ってもっといじめたいな~って思う」
「…………好きなんスか…」
「……わからん」
…誰なんだろう…
頬付先輩でもそう言う風に思う人がいるんだ…
………学さんかな…
頬付先輩がそう思うてことはやっぱりかわいいのかな…紺庄先輩もそう思うのかな…
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