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健斗くんの話 ドキドキしてむずむずしてイライラする

その後も頬付先輩は決まって5限は校舎裏にサボりに来た 座ってボーっとしたまま動かないだけの日や隣で寝てるだけの日もあったしいろいろ喋るときもあった いつの間にか友達…ではないけど…オレが学校で紺庄先輩の次にかかわりを持ってる人になった いまだに苦手だけど… そうやって昼飯を紺庄先輩と食って、5限を頬付先輩とサボってる生活をしているうちにどんどん紺庄先輩が恋愛感情として好きなんじゃないかと思えて来た でも認め難かった、先輩もオレも男だ… ……女だったら万事解決なのに…何度もそう思った そんなときに頬付先輩と目からうろこな話を聞いた 「男じゃあかんのん?」 「…え、だって…男…ッスよ?」 頬付先輩と普通に話してるはずだったのに誘導されていつの間にか 男が好きかもしれないなんてことまで話させられてた 「何がダメなん?」 …そう言われると困る… 別に俺には差別思想はない…つもり…だけど… けど普通じゃないだろ… 「普通じゃないじゃないッスか?」 「普通じゃなかったらあかんの?」 「………でも…」 「なに?」 「………」 言葉に詰まる… なんで駄目なんだろう… その日はずっとそのことでもんもんとさせられ続けた バイトにも手がつかず、家に帰っても上の空でロクに寝ることもできないぐらい考えたけどわからなかった 「お~いしい~」 「………」 その日も紺庄先輩と弁当を食ってた 紺庄先輩は今日もおいしそうに食べてくれる ほっぺふくらましてる…かわい………くない… どうしても頬付先輩と話したことが気になってしょうがなかった そのせいでそわそわ落ち着かない 「たける?どうしたの?」 「あ、や…なんでもないッス…」 ボーっとしてたら顔を覗き込まれて焦る、顔近い… …顔が熱くなってドキドキする 日に日にドキドキが強くなっている 顔が赤い気がして顔を背けてしまった 「寝不足?クマできてる」 「…あ」 紺庄先輩の手が目元に触れる ビクッてなる 触られたところがもっと熱くなる むずむずする… 「…大丈夫です」 「そう?顔も赤いよ、体調悪い?」 「ほんと大丈夫ッス」 そう?と言って紺庄先輩はそのまま弁当に顔を戻してしまった 顔あっつ…ドキドキしてる… 息を付いて自分を落ち着かせ自分も弁当を食べる 「あ!そうそう今日ね、学がね……」 やっと落ち着いたところで先輩が話し始めた また学さん…なんか…嫌だ… 学さんの話をしながら笑う先輩を見るの苦しい… イライラする ドキドキしてむずむずしてイライラする…全部先輩のせいで… ……先輩が…好きだから…? 「ねぇ?猛?聞いてる?」 「……ださい」 「え?」 「…学さんの話…しないでください…」 「へ?なんで?」 ダメだ、いやーな気持ちがあふれ出て止まらない 「嫌なんです…先輩が楽しそうに学さんの話してるのを聞くの…辛いんです…」 「……………」 「……スンマセン」 そう言って耐えられなくなってその場を立ち去った 紺庄先輩の顔が見れなかった 自分がなんでこんなことを言っているのかもわからなかったしそんなことを言ってしまった自分も嫌だった 腹立たしくて、悲しくてなぜか泣きそうだった

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