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健斗くんの話 猛としずちゃん先輩
「あら?健斗くん?」
振り向くとしずちゃん先輩が立っていた
…え…なんで…
「え、やだ、なんで泣いてるの?かわい…じゃなくてどうしたの?」
しずちゃん先輩がしゃがんでハンカチで顔を拭いてくれる
「…え、や…たけるが…」
「たける?猛が何かしたの?」
しずちゃん先輩がおれの頭を撫でてから立ち上がって鍵を開ける
なんで?なんでしずちゃん先輩が猛の家の鍵をもってるの?
まだ頭が追いついてなかった
「…ちょっと、猛…」
「……あ、姉貴…おかえり…」
「健斗くんになにしたの…」
「や、別に…オレは、何も…」
「なにしたの!?」
「健斗くんクッキー食べる?」
「食べる」
「ごめんね~ぼろくて、猛!!健斗くんあんたに用事あんでしょ!!こっち来なさい!!」
「…うるせ…」
今おれは吉田家の家でクッキーと紅茶をごちそうになってる…
あのままあれよあれよという間に猛がしずちゃん先輩に言い負かされてあれよあれよという間に家に案内されて居間に座らせられた
ほんとにあっという間だった
まだ頭が混乱してるけど結論から言うと猛としずちゃん先輩は姉弟らしい…
高3のしずちゃん先輩、高1の猛、そして中3のしずちゃん先輩に似てしっかりした美香ちゃん、中1で野球をやってるらしい(おれより大きい)洋太くん、小2のマイペースな理沙ちゃん、2歳で双子のひかりちゃんとひかるくん…
…そっか…しずちゃん先輩も「吉田」だ…
「うるさくてゴメンね~」
「…大丈夫…」
「で、猛に話あるんでしょ?」
「あ、うん…でも…」
迷惑だったかな…猛も奥の部屋に行っちゃったし…
自信がなくなってしゅーんとなる
「大丈夫だよ、友達って猛の事だったんだね~猛毎朝楽しそうにお弁当作ってたよ」
「ほんと?」
「ほんと、悔しいけど私より猛の方が料理上手でしょ?」
「そんなことないよ!!猛のもしずちゃん先輩のもおいしいよ!!」
「ふふふ、ありがと、なにしたのか知らないけど猛きっと引っ込みがつかなくなってるだけなのよ
大人な健斗くんが見てやってくれると助かるわ」
大人……初めて言われた…
そうだ、おれ先輩なんだ…
ちょっと照れくさかった
「わかったよ!!」
「じゃ、私他の子連れて買い物行ってくるからゆっくりしていってね?」
「うん!!…………あのさ、しずちゃん先輩?」
「なあに?」
バックを掴んで出かける準備をしだした先輩を呼び止める
「ありがとう!!」
おれ、がんばるよ!!
ちゃんと話す!!ちゃんと謝る!!
しずちゃん先輩はにっこり笑って出かけて行った
しずちゃん先輩がせっかく二人きりにしてくれたんだから!!
…………………そっか…二人きりか…
なんか変にドキドキした
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