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あの人
「っひ…ひっく…」
泣き疲れて涙も枯れてボーっと壁によっかかってしゃくりあげていた
「かえろ…」
やっと落ち着いてスマホを開いてみるともう5時になるところだった
健斗と猛からメールと電話がたくさん来ていた
でも返信する気も起きない
そのままなにも持たずに学校を出た
駅の方には行かないで繁華街をうろうろする
なんとなく家にも帰りたくなくて歩き回る
何も考えられなかった
人通りも少なくなった遊歩道みたいなものの端に置いてるベンチに座る
もう周りも暗くなってた
またじわっと涙が滲んでくる
「あれぇ~?まなちゃんじゃん?」
久々にまなって呼ばれた
ゆるゆると顔を上げる
「あーやっぱり~」
目線の先にはいつかの赤茶の髪の先輩がいた
「逃げないの?」
また前みたいにレイプされようとなにされようとどうでもよかった
「あれ?ほんとに逃げないんだ?」
先輩はそのまま俺の隣に座って聞いてもないのにペラペラいろいろ話し出した
初めて知ったが先輩は内海翔(うつみしょう)って名前であのあと先輩は美容理容系の専門学校に入りなおしたらしい
他の二人とはもう縁を切って真面目に学生をやっているとか
「オレホントはまなちゃんのこと結構好きだったんだよね~」
「………」
「だから許してくれとは言わないけどあれも愛情の裏返しだったーみたいな…」
「…………」
「まなちゃん覚えてないでしょ?まなちゃんが1年の時に濡れ衣着せられて先生に怒られてたオレのことみんなめんどくさがって避けてたのにまなちゃんが「やったのその人じゃないです!!」って言ってくれたの、それで一目ぼれだったんだよな~」
「……………」
「それでたまたま頬付クンとキスしてるの見てイラッとしてああいうことに走っちゃったんだよね、一人でヤる勇希がなくてあの時つるんでた二人誘ったんだけどやりすぎだったよね、ごめんね?」
「………………」
「っま、また頬付クンに絞られるのは嫌だからもう手出さないけど~」
「…………………」
「あ、オレと一緒にいんのも嫌だよね?じゃあね~」
そのまま内海先輩はちょっとさみしそうに笑いながら手を振ってどこか行こうとした
何故かその手を引き留めてしまう
もうおかしくなってたのかもしれないし人肌が恋しかったのかもしれない
それに今の内海先輩はあまり怖くなかった
「…待って、ください」
「え?」
「………銀とは…なんでもないんです…」
「…………」
「内海先輩…俺の事…抱いてくれませんか……?」
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