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やりなよ!!

「……でバンドのボーカルに誘われたんスよ…」 家に遊びに来た紺庄先輩に今日あったことを話した ひかるがオレの膝に乗ってオレの指を吸って遊んでいる 紺庄先輩はひかりと理沙に髪を縛って遊ばれたり服を引っ張られたりしてる 「え、よかったじゃん!!見に行くね!!」 「いや、オレやる気ないッス…」 「え~なんで~」 理沙が便乗して「なんで~」と復唱する 「あ、もう!!健斗ちゃん頭動かさないでよ!!」 「え、あ、ごめんごめん…理沙ちゃんおれの事健斗お兄ちゃんってよんでくれても…」 「なぁに?健斗ちゃん?」 「……………」 紺庄先輩は理沙に赤いぽんぽんのついたゴムで二つしばりにされてた ………かわいい… 理沙は紺庄先輩の事を健斗ちゃんと呼んでいた… 「あ、でさ、やりなよ!!絶対かっこいいよ?」 「そ、そッスか?」 不意に先輩にかっこいいと言われて急に恥ずかしくなった そこに姉貴と洋太が帰って来た 「あ、健斗くん来てるじゃん!!健斗くんあそぼ!!ゲームしよ!!」 「だめ!!健斗ちゃん理沙と遊んでるの!!!」 「そんなことしてもつまんねぇだろ!!」 「ちょ、ちょっと…」 「おい、ケンカすんな」 しばらく二人はワーワーやってたけど結局二人でゲームをすることで落ち着いたらしい 仲良く隣の部屋に移動して行った …………オレの家族はオレ以外みんな紺庄先輩の事を名前とおのおのの敬称で呼ぶ オレまだ名前で呼んだことないのに…… 「あら、健斗くんいらっしゃい」 「あ、しずちゃん先輩!!」 「いまお菓子出すね、猛!!!あんたお菓子とお茶ぐらい自分で出しときなさいよ!!!」 「ひかる膝に乗ってんだよ!!」 姉貴はぶつぶつ言いながらもクッキーとお茶を持ってきてくれた 「あ、そう言えばあんた鈴木にボーカル誘われたのに断ったんだって?」 「あ、おーやる気ない」 「えーもったいない、あんた歌うまいんだからやったらいいのに…ちょっとはモテるんじゃない?」 「そうだよ!!やった方がいいよ!!猛の声かっこいいもん!!」 姉貴に便乗して紺庄先輩も乗っかる ……またかっこいいって言われた… 「そうだよ!!たけ兄の数少ない特技のうち唯一モテそうな特技なんだからやった方がいいよ!!」 隣の部屋から美香がひょこっと顔を出した 「美香帰ってたのかよ、帰ったならただいまくらい言えよ」 「言ったよ、なのに誰もおかえりーって言ってくれないんじゃ言う気失せちゃう」 「…………」 「で、たけ兄やった方がいいよ!!バンドのボーカルなんてBLの基本中の基本!!」 「そうよ!!後ろにマイク突っ込まれてスイッチ入れられて自分の中の音聞かされて「こっちも良い声じゃねーか」って王道なんだから」 「攻めはギターかドラムがいいかな~」 「ドラムのバチとか入れられちゃうのね」 「そそ、ステージの上でね」 「それでそのまま無理やりイかされ…」 「やめろよ!!」 幸い紺庄先輩は意味がわかってないみたいで頭に大量のはてなを浮かべてた ……よかった… 「でもたけ兄絶対やった方がいいって!!」 「そうよ、猛ホントに歌は上手よ?」 「ほら!!ほら!!!やりなよ猛!!」 「え、っや、でもクラスのもあるし…」 「あんたどうせまたクラスでもハブられてんでしょ、暇なんだからおとなしくやっときなさいよ、今鈴木にメールしてあげるから」 「え、猛クラスで一人なの!?」 「っや、それは、まぁ…」 「で、たけ兄やるよね!!」 「あ、そうだよ、やりなよ!!やってよ!!」 「ほら猛鈴木にメールしてあげたから」 「なんでだよ!!」 こうしてオレは不本意ながら鈴木先輩のバンドR'sで期間限定でボーカルをすることになった…

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